血管内皮機能の評価に最もよく用いられるのが、「血流依存性血管拡張反応(FMD)」の測定です。この検査ではまず、超音波を使って安静時の腕の血管の太さを調べ、次に、血圧測定時に使用するカフ様のもので圧迫して、腕の血流を5分間遮断します。カフを緩めた際に、内皮細胞から放出される一酸化窒素によって血管が拡張される現象を、再び超音波によって検出し、安静時と比較してどのくらい血管が拡張したかを計算します。数値が大きいほど内皮機能は良好と言えます。

一方、血管平滑筋機能の評価に最もよく用いられる方法が、「ニトログリセリン誘発性血管拡張反応(NID)」です。この検査でもやはり安静時の腕の血管の太さを調べておいて、ニトログリセリン舌下錠(心臓の動脈を広げる作用のある、狭心症の薬)を使用してもらいます。そこから5分間にわたって血管の太さの変化を調べて、最大となった時点で安静時の太さと比較し、血管の拡張率を計算します。こちらも、数値が大きいほど平滑筋機能は良好と言えます。

コーヒーを毎日飲む人のほうが血管機能は良好

著者らは、2016年4月から2021年8月までの期間に、広島大学で健康診断を受けた462人の高血圧患者を対象に、コーヒーの摂取とFMD、NIDによって評価した血管機能の関係を調べることにしました。高血圧の定義は、収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg超、または、拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg超としました。

462人の平均年齢は65歳で、59.7%は男性でした。65.2%に脂質異常症、29.2%に糖尿病、20.6%に心血管疾患歴がありました。また、54.7%は、喫煙者または以前の喫煙者(現在は禁煙)でした。

それらの人々を、コーヒーの日常的な摂取の有無に基づいて、コーヒーを飲む人(コーヒー摂取群、391人、平均年齢64歳、男性が57.5%)とコーヒーを全く飲まない人(コーヒー非摂取群、71人、平均年齢67歳、男性が71.8%)の2群に分けました。コーヒー摂取群の摂取量の中央値は1日に2杯[注2]でした。コーヒー非摂取者と摂取者の収縮期血圧と拡張期血圧には差は見られませんでした。

コーヒー摂取群のFMDは3.3%、コーヒー非摂取群のFMDは2.6%で、コーヒー摂取群で有意に大きくなっていました。NIDはそれぞれ11.3%と9.6%で、やはり統計学的な有意差が見られました。

続いて、内皮機能障害(FMDが1.6%未満)、血管平滑筋機能障害(NIDが8.4%未満)のリスクとコーヒーの摂取の関係を検討しました。結果に影響を及ぼす可能性のある、年齢、性別、BMI(体格指数)、収縮期血圧、脂質異常症、糖尿病、心血管疾患、喫煙習慣を考慮して分析したところ、コーヒーを飲まない人と比べると、コーヒーを飲む人が内皮機能障害となる確率は45%低く、血管平滑筋機能障害となる確率は50%低いことが明らかになりました。

さらに、コーヒーの摂取量と血管機能障害の関係についても検討したところ、コーヒーを飲まない人に比べ、1日に0.5杯から2.5杯(約100~500mL)飲む人において、内皮機能障害と血管平滑筋機能障害を発症する確率が統計学的に有意に低くなることが明らかになりました。

コーヒーに含まれているどの成分が有効なのかは分かりませんが、適量のコーヒーの日常的な摂取は、高血圧患者の血管機能に利益をもたらすことが示唆されました。

[注2]この調査では、コーヒー1杯は200mLとしました。一般的なコーヒーカップ1杯は150mL程度で、マグカップ1杯となると250mL以上入ります。

[日経Gooday2022年10月19日付記事を再構成]

大西淳子
医学ジャーナリスト。筑波大学(第二学群・生物学類・医生物学専攻)卒、同大学大学院博士課程(生物科学研究科・生物物理化学専攻)修了。理学博士。公益財団法人エイズ予防財団のリサーチ・レジデントを経てフリーライター、現在に至る。研究者や医療従事者向けの専門的な記事から、科学や健康に関する一般向けの読み物まで、幅広く執筆。

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