「事業開発」のニーズが高い

では、具体的にはどのような職種の人が採用対象になるのでしょうか。現在の傾向では、「事業開発」の人材ニーズが多くを占めています。

これまでビジネスの観点では見られていなかった領域で、新たなビジネスモデルを生み出していく。もともとあるマーケットのシェアを奪いに行くのではなく、新しいマーケットを創造していく――。そのような発想を持ってビジネスをプロデュースできる人材が求められています。

SDGsやESGといった概念が広がっていく中、自社のリソースを活用して新たな事業開発に取り組む企業も増えています。

例えば、私が採用の支援を行っているK社。産業廃棄物の収集運搬・処理で長年の実績を持ち、回収した資源の再生事業も手がけています。

SDGs意識の高まりを受け、企業ブランディングのためにも「資源再生」への取り組みを強化する企業が増える中、同社への引き合いが急増しています。同社ではこの潮流に乗り、環境事業の強化に乗り出しました。事業開発、アライアンス推進、ブランディング、PRなど、幅広い職種を募集。首都圏の中心部から離れた立地でありながら、多くの応募が集まっています。

上場も予定しており、すでに最高財務責任者(CFO)も採用。その人はもともとメーカーでCFOを務め、高年収だった人ですが、前職と同等の年収で迎えられました。

このほかにも、「いじめ」「ハラスメント」などの問題解決を目指す企業が最高執行責任者(COO)を採用、子供の貧困対策に取り組むNPOが新規事業・経営管理などの責任者を採用といった事例が生まれています。

また、自然農法で安全・安心な食糧供給を目指すアグリバイオベンチャー企業、ベジフード(動物性ではない食材)やアレルギー対応の食品を開発するエシカルフードメーカー、廃棄物を活用した紙の生産を推進する商社など、さまざまなソーシャルビジネスが活性化しています。

副業として関わる人も増加

ここまでは、ソーシャルビジネス関連企業が、事業開発・事業拡大に向けて幹部ポジションの人材を採用する事例をご紹介しました。このほかにも、最近目立つのが副業として関わる人の増加です。

近年、副業を解禁する企業が増加しています。実際に副業を行っている人たちの理由・目的として、「副収入を得る」よりも「本業ではできない経験を積みたい」「本業とは別に、好きなこと・やりたいことをしたい」という声が多く聞こえてきます。

そこで、社会課題の解決に興味を持つ人が副業でNPOの業務を担うケースが増えています。ボランティアではなく、副業ですから、当然、報酬が発生します。

NPOサイドとしては正規職員を1人雇用するのではなく、副業の業務委託メンバー2~3人で1人分の役割を担ってもらう体制となります。特に必要度が高い「IT(情報技術)人材」はスペシャリストの正規雇用が難しいので、副業という形でサポートしてくれる人材を確保しています。

こうしたパターンでの募集職種は、ITエンジニアのほか、事業開発・人事・経理財務・法務など、ビジネスサイド・経営管理サイドで多様です。なお、一般の企業でいう「営業」ポジションの採用はあまり見られません。営業に近いミッションとしては、事業開発の一環としての「アライアンスパートナー開発」「外部折衝」などがあります。

現在、営業職を務めていて、「事業開発の領域でキャリアを積んでいきたいが、今の会社のキャリアパスでは難しそうだ」と悩んでいる人もいらっしゃると思います。そういう場合は、NPOやソーシャル系ベンチャーなどで、副業として外部折衝を担いつつ、事業開発プロジェクトの経験を積むのも一つの手かもしれません。

※「次世代リーダーの転職学」は金曜掲載です。この連載は3人が交代で執筆します。

森本千賀子
 morich代表取締役兼All Rounder Agent。リクルートグループで25年近くにわたりエグゼクティブ層中心の転職エージェントとして活躍。2012年、NHK「プロフェッショナル~仕事の流儀~」に出演。最新刊「マンガでわかる 成功する転職」(池田書店)、「トップコンサルタントが教える 無敵の転職」(新星出版社)ほか、著書多数。

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