
春といえば、桜をイメージする人も多いことでしょう。古くは万葉集や古今和歌集にその美しさが詠まれており、日本人にとってはなじみが深く、その花を愛(め)でると、自然と気持ちが華やいできます。お花見を楽しみにしている人も多いでしょうが、昨今の新型コロナウイルス感染症の影響で、各地のお花見スポットでは「飲食自粛」が広がり、これまでとは様相が異なっているようですね。
日本にお花見という文化が伝わったのは奈良時代、遣唐使が持ち帰った「梅の花」を貴族が鑑賞したのが始まりとされています。その後、日本に定着していた桜を梅に代わって鑑賞するようになっていったそうです。
基本的には鑑賞用ですが、その美しさと縁起の良さから、桜は食用としても活用されています。開花期間が短いため、食用には花や葉を塩漬けにした「桜の塩漬け」を使うのが一般的です。塩漬けにすると、桜の花や葉に含まれる糖が分解され、クマリンという香り成分が生成されるため、生の状態では感じられない独特の華やかな香りが醸し出されるというメリットもあります。近年では、桜の花や葉を乾燥させて粉末状に砕いたパウダーなども発売されています。
桜を使用した代表的な食べ物は、なんといってもスイーツでしょう。和菓子のさくら餅やパウンドケーキ、クッキーなど、春先には桜を原料に使用したスイーツ類が数多く発売され、「桜フェア」などとして店頭を色鮮やかに彩ります。だからかもしれません。「スイーツにしか使えないもの」と思われがちな桜ですが、実はそんなことはありません。
桜の花の塩漬けは、しょっぱさと酸味が主たる味わいです。しょっぱくて酸味がある食べ物といえば、漬物もその部類に属します。漬物もそのまま食べるだけでなく、料理のアクセントとして細かく刻んで混ぜて使う場合があるように、桜の花の塩漬けも、しょっぱさと酸味を料理のアクセントにしたい時に、少量加えて使えばいいわけです。