営業提案のパワポ添削 言いたいことはカタチで示せ
いまいちパワポ改造計画
なんだかうまく伝わらない――。いまいちなパワーポイントの資料が、みるみる改善されていくシリーズ「いまいちパワポ改造計画」。ツイッターで10万人以上のフォロワーを集めている"パワポ芸人"トヨマネさんの監修のもと、架空のIT系会社員「今市くん」と「池照さん」の対話形式でパワポ作成のコツをお伝えします。

某IT企業で働く社会人3年目。やる気と元気に加え、池照さんのおかげで資料作成にも徐々に自信がついてきた。

今市くんと同じ部署の先輩。わかりやすい資料に定評があり、部署内でも一目置かれている。

破和広告社で働く社会人3年目。今市くんの大学の同期で、資料作成のスキルをもっと上げたいと思っている。
今市くんが連れてきた、破和広告社の天咲さん。きょうは5枚目のスライドを見ていきます。
天咲 池照さんに見てもらいたいスライドも、これで最後になります!
池照 そっか、これで最後か。気合入れて見ていかないとだね。

天咲 資料の終盤で、破和広告社としてこのプロジェクトに懸けている思いと、提供できる広告商品を示しているスライドです。
池照 なるほどね、要は「協賛してください!」っていうスライドだ。プロジェクト自体をちゃんと事業としても成立させるためにかなり重要なスライドだね。今回もまずは今市くんに意見を聞いてみようか。
今市 そうですねえ、とりあえずフォントと全体のレイアウトは変えた方がよさそうですよね。「游(ゆう)ゴシック」にそろえて、タイトルとキーメッセージを書いて……。例えばこんな感じではどうでしょうか?

池照 うんうん、いいね。フォーマットをそろえて、ちゃんとキーメッセージを書くことはとても大事。こうするだけでも、元の資料よりはグッと見やすくなってるんじゃないかな。今市くんもこなれてきた感じがするね。
今市 照れますね(笑)
池照 でも、このスライドはもうちょっと根本的なところから考えた方がいいかもしれない。きょうのポイントも3つにまとめてみたよ。

天咲 なんだかいつにもまして、抽象的な感じがするかも……。
池照 そうかもね(笑)。まずは1つ目、「要素の関係性を意識する」から見ていこうか。今市くん、スライドには「必ず入れるべき3要素」 があるんだけど、覚えてる?
今市 え、何だろう、友情・努力・勝利とかですか?
池照 残念。その3つは少年漫画にはとっても大事なんだけど、スライドで大事なのは「タイトル・キーメッセージ・図表」の3つ。最初のプロジェクト概念図のスライドの時にやったのに、覚えてないのは残念だなあ。
今市 すみません、ついボケてしまいました……

天咲 キーメッセージが大事ってことは今までも何度も教えていただいてますよね。
池照 そうだね。この中でも一番大事なのはキーメッセージ。「要するに何を言いたいのか」を示す部分だからね。
今市 でも、タイトルと図表は、さすがに僕たちが作るスライドにもだいたい入ってますよ? 今回もちゃんと書いてますし。
池照 そうなんだけど、ここで考えたいのはこの3つの関係性。この3つは、基本的にこういう関係性になっている必要がある。これも、1回目のおさらいだけどね。

今市 うーん、なるほど。言われてみればそうですね。
池照 元の資料を見てみると、要素同士の関係性がよくわからないよね。「Z世代向けアプローチをお考えの企業様」って書いてあるけど、これがどういう意味なのかよくわからなくない?

天咲 た、たしかに、なんか唐突感があるかもです。
池照 深く考えずにスライドを作ると、いつの間にかこの3要素の関係性がぐちゃぐちゃになっちゃいがち。こうなっちゃうとパッと見で意味が伝わりにくくなるから注意して。

池照 まずは、こうやって言葉で整理してみよう。言いたいことって要するにこういうことだよね。

天咲 まさにです! こういう風に整理すればいいんですね。
池照 毎回やるのは大変だけど、慣れないうちは都度こういうフレームワークで整理してもいいかもね。そして、これを単純にスライドの上に置くとこうなる。

池照 で、次のポイント「言いたいことを目立たせる」に移ろうか。このスライドで一番言いたいのってどこだと思う?
天咲 うーん、協賛してほしいわけだから、「お問い合わせください」っていう部分ですかね?
池照 いいね。色々なパターンはあるけど、今回はそこを強調してみようか。全体をグレーで作ってるから、ここに色をつけるだけでOK。

今市 「まずグレー」ですね!
池照 その通り。主役を強めるより、脇役を弱めることが重要ってやつね。
天咲 色を減らすと、本当に見てほしい場所がわかりやすくなるんですね。

今市 なるほどな〜。それじゃあ、こうやってそれぞれの四角形に要素を入れ込めば完成ですかね?

池照 う〜ん、これはちょっとイマイチだね……。ここで3つ目のポイント「図形の見た目で区別する」を考えてみよう。「広告商品」は他の2つの項目と違って、「この中から選んでください」っていう"選択肢"みたいなイメージの要素だから、四角形に入れて表現してみようか。

天咲 おお、なんかスッとわかりやすくなりましたね。
池照 そうだね! こういう風に、図形が持っている意味合いの違いを、図形の見た目でも表現してあげるとわかりやすくなる。デザインっていうのは「意味を形態に落とす」ことだからね。

今市 あ、「タイトルをつける」もやってますね。そこに書いてあるものが「何なのか」をきちんと書く、すっかり忘れてました……。
池照 それも大事だね。まあ、人間そうそう一発でできるようにはならないから、そんなに気にせず! あとは、アイコンとか破和広告社のカラーを適度に配置してあげて、たとえばこんな感じでどうかな?

天咲 わかりやすくなりました! ありがとうございます!
池照 それはよかった。スライドは一目でわかってナンボだから、手間をかけすぎずに工夫できるといいね。さて、きょうのポイントはこの3つだった。

池照 これで全5回のパワポ添削が終わったわけだけど、2人とも、どうだった?
天咲 目からうろこが落ちるような気分でした!なんとなくうまくいかなかったところが理由をもって改善されるので、なんだかスッキリしました。
今市 かなり「わかったつもり」になってたんですけど、具体的なスライドを見るとまだまだだったな……、と痛感してます。まだまだ修行していきます!
池照 2人ともありがとう。資料作りの上達には、やっぱり経験が大事! 5枚のスライドで見えてきたポイントを普段の実務に生かして、自分のモノにできるようトライしてみて。
天咲・今市 はい!
