20代男性が今後の健康市場のカギになるかも
これまで、健康食品など健康維持・予防関連商品のユーザーは、主に50代以上の女性が中心となってきた。しかし、新たな層も生まれているようだ。意外にも若い男性世代の中に。
藤田代表が理事を務める、健康・ウェルネスに関する研究機関、ウエルネス総合研究所は10代から70代までの男女約4800人を調査し、健康意識や行動をまとめた『ウエルネストレンド白書』を2021年末に発刊した。
このリポートは、調査の回答結果から健康関連の消費をリードしていると想定される「健康ストイック層」「健康コンシャス層」など7つのクラスターに分類してその特性をまとめている。
中でも、既に認知度が高い健康食品・素材にはあまり関心を示さず、筋トレなどの運動に積極的に取り組む「トレーニング大好き層」は、全体の6.1%と一番の少数派で、やや異色という位置付けだ。しかし、20~30代男性をコアとするこの層は、どの層よりも、まだ認知率が低いウロリチン、NMN、そしてさらに漢方の補中益気湯といった、老化制御機能で注目されている最先端の素材に高い関心を示している。
電通が2007年から継続して実施している20代~70代の男女対象の『ウェルネス1万人調査2020』でも似たような傾向が見られる。ここ数年、20代男性で健康意識・行動が多岐にわたる「健康アクティブ層」の割合が最も高くなっており、「話題の/新しい健康法は実践してみる」というスコアも男女含めた全世代中20代男性で最も高い。
長く続く低成長時代に多感な時期を送ってきた経験や、不安を抱えて高齢期に入りつつある親世代を反面教師として、“自分の健康は自分で守る”という意識が芽生えているのかもしれない。理由はどちらの調査でも定かになってはいないが、20代男性の中に生まれている新しい健康意識を持った層が、若さと健康を維持することの価値を理解し、それを実現する老化制御研究の成果を身をもって示しつつ消費市場まで変えていったら、日本の未来の青写真も異なったものになってくる可能性はある。
近畿大学の山田秀和教授は、2025年に開催される『大阪・関西万博』の大阪パビリオンでディレクターを務める。再生を意味する「REBORN」をテーマにする同パビリオンでは、アンチエイジング・ライドと呼ぶ乗り物に搭乗している間にその人の生体データを分析し、未来の自分を仮想体験してもらう計画だ。
山田教授はこのライドを通して、「特に、若い人たちが長い期間、元気に活動することを可能にする社会が訪れることを示したい」と意気込む。
日本は、今、国を挙げてそのような未来を目指さなければならない踊り場に立つ。
(日経BP 総合研究所メディカル・ヘルスラボ客員研究員 西沢邦浩)
近畿大学アンチエイジングセンター教授。近畿大学奈良病院皮膚科教授を併任。日本抗加齢医学会理事長。近畿大学医学部卒業後、同大学院医学科博士課程修了。2007年、近畿大学にアンチエイジングセンターを創設。日本皮膚科学会専門医。日本アレルギー学会専門医。日本東洋医学会専門医。老化時計(Aging Clock) など生物学的年齢計測を用いて、老化速度のコントロールや若返り治療を臨床治験に持むための研究を進める。
インテグレート代表取締役CEO。ウェルネス総合研究所理事。味の素を経て、ザイロフィンファーイースト社(現ダニスコジャパン)の設立に参画。キシリトール・ブームを仕掛け、製品市場をゼロから2000億円規模へと成長させた。2007年、IMC(統合型マーケティング)プランニングを実践する、マーケティングエージェンシーのインテグレートを設立。