日経プラスワン

片付けに一番苦労するのが、モノへの愛着が強いが収納意識の低い「秘密基地住人」のタイプだ。「思い入れ」が「便利さ」よりも優先されてしまうため、捨てることを強要すると、傷心からのリバウンド行動を起こしてしまう。かといって「カリスマ収納職人」のように、こまめに家事に取り組む余裕もないため、整理収納アドバイザーも指導方法に悩むタイプである。

サマリー(東京・渋谷)が片付けへの挫折経験をタイプ別に集計した調査によると、「ミニマリスト」は挫折率が2割だったのに対し、「秘密基地住人」の挫折率は7割だった。モノへの愛着が強い人はそれだけ、片付けの難易度が上がるということがデータからも確認できる。

では秘密基地住人に診断されてしまったら、片付けを諦めるしかないのだろうか。答えは否で、丁寧にモノと向き合う時間をとることで、時間はかかるが必ず片付いた部屋は手に入る。ミニマリストのようになるのは無理かもしれないが、その人に合った片付け方がある。具体的な片付け方法については本コラムで今後も掲載していく予定だ。

テレワークが増えたこともあって、家族で過ごす時間が増えている昨今。「パートナーが洋服を脱ぎっぱなしにする」「散らかった部屋に誘惑が多すぎて仕事に集中できない」など、片付けに関する悩みは絶えない。サマリーの調査によると、半数以上の夫婦が、モノのトラブルが原因で結婚を後悔した経験があるという。

アイドルグッズやフィギュアなど、集めること自体を趣味にしている人は多い。パートナーがこうしたモノへの愛着が強いタイプだったら、「モノが多いから捨てなさい」と説教をしても、効果は薄いだろう。1つも手放したくないと意地になってしまうのがコレクター心理というものだ。

だからといって、勝手にモノを捨てるのは言語道断。まずは相手がモノや収納に対してどのような価値観を持っているかを把握するところが第一歩だ。片付いた部屋には、掃除がしやすい、家賃が節約できる、不要な買い物や外出が減る、仕事に集中できる、リラックス効果が高いなど、数々のメリットがある。モノへの愛着を尊重しつつ、自宅の空間をより快適にするべく、歩み寄ることが大切だ。

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愛着あるものも定期的に整理

愛着のあるものを捨てる必要はない。だが、押し入れにしまい込んだままでは、ほこりがたまり、何を持っているか記憶も曖昧になる。定期的に整理しよう。

通常の整理では、使用頻度で分類するが、コレクション品に「使用」という概念はそぐわない。手にとる頻度や愛着の深さなど、自分なりに分類し、グループごとに定位置を定めていく。愛着が強いモノは部屋に飾る・環境の良い場所に保管するなどの特別扱いをし、愛着が弱いモノはデータ化する・友人に譲る・オークションで売るなどして、部屋の空間を捻出しよう。

(整理収納アドバイザー 米田 まりな)

[NIKKEI プラス1 2022年1月29日付]