オンライン会議、快適な音で マイクも特性知って使う
オンラインでの会議や授業が普及してきた。聞き取りにくい声に集中し続け、終了後ドッと疲れた経験は筆者だけではないだろう。今回は、聞き取りやすくする方策を提案する。
まずは出力側、スピーカーやヘッドホンについてだ。職場も学校もオンライン化が進み、家の中で複数人が同時にオンライン通話ということも少なくない。各人に防音の効いた部屋があればよいが、そうもいかない。となると、スピーカーの音量を小さくするか、イヤホンやヘッドホンを使用することになる。
会話の音は、大きければ聞き取りやすいわけではない。むしろ、周囲の音を打ち消そうと音量を上げると、音漏れが周囲への騒音になり、自分の耳も痛めてしまう。小さくても聞き取りやすい音を目指したい。
ヘッドホンの場合、耳に当てるだけの直径の小さなものよりも、耳をすっぽり包んでくれる大型のヘッドホンの方が、外からの遮音性は高くなる。近年、価格がグッと下がってきたノイズキャンセリング機能付きの製品ならばより遮音性が高くなる。外の音を感知してそれを打ち消す信号を発しつつ、聞きたい会話や音楽を流す仕組みだ。
ただし、耳を塞ぐヘッドホンやイヤホンは、蒸れたり、耳が痛くなったりすることもある。さらに、外の音が聞こえにくいので、来客や家族の呼びかけに気付けないことがある。そういった不都合を一気に解消してくれるのが、骨伝導ヘッドホンだ。

筆者は昨年から使い始めたが、予想以上に聞き取りやすく、オンライン講演では毎回使用している。耳をふさいでいないので、対話相手を拒絶しているように見えないのもいい。こまめに充電しないとバッテリー切れが心配なのと、たまに無線接続が不安定になるのが注意点だ。
首に掛けるネックスピーカーも選択肢だ。ヘッドホンやイヤホンと違って音が外に漏れるのだが、耳に近いので、それほど大きな音量にしなくても聞き取れる。ただし、オンライン会議などでマイクと併用すると、向きや出力によってはハウリングが起こる。
続いて入力側のマイクについて。快適な音にするには入力側の配慮も必要だ。マイクの入力レベルが大きすぎて割れた音や、小さすぎる音は聞く側のストレスになる。
まずは、普段使っているマイクの特性を知ろう。集音の特性で主に、一方向からの音を集音する単一指向性と、360度から集音する全指向性に分かれる。複数の人が話す場面で単一指向性のマイクを使うと、真正面の一人の声だけが聞き取りやすく、他の人の声は聞き取りにくいということが起こる。
外付けマイクを使用する際は、置く位置にも気をつけよう。マイクと発言者の間にキーボードを置くと、キーボードの入力音を拾ってしまう。ヘッドホンなどに付随するマイクは、口との距離が近いので、小さな声でもよく聞こえる。ただし、服の襟や髪の毛などの摩擦音が入ると、とたんに聞きづらくなる。また、息が吹きかかる音も耳障りなので、風防対策としてスポンジ製のウインドスクリーンなどをマイクにかぶせておこう。鮮明に聞こえるようにと外してしまうのは逆効果だ。

全指向性マイクは、エアコンの動作音や廊下の足音などの環境音も拾ってしまう。話し声が埋没して聞き取りにくくなるので要注意。一方、会議室で複数人の声を届けたい時などには適する。デジタルカメラやビデオカメラのマイクは、目的に合わせて設定を変えられるので確認しよう。
自分の声がどのように伝わっているのか、事前に確認する方法はいくつかある。ビデオ会議アプリのZoomやTeamsを使うのなら、事前にマイクテストを活用しよう。自分がマイクに向かって話した声が数秒後に返ってくるので、その音を確認して、環境音が入らない場所に移ったり、マイクの向きを変えたりすればよい。
遠慮なく指摘し合える親しい人などに確認してもらえるとなおいいだろう。「これだとどうかな?」と試行錯誤しやすいからだ。ビジネスでのオンライン会議など、失敗できない場面での音声トラブルを回避するには、やはり入念なリハーサルが欠かせない。慣れてきた頃が一番危ないのは、何事にも言えることだ。
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スマホのマイク、塞がないで

スマートフォンでオンライン通話するときに注意したいのが、マイクを手で塞いでいないかだ。機種によってマイクの位置や数は異なるが、メインマイクが底面にあるというのは多くの機種に共通している。サブマイクは、上面や背面などまちまちだ。
スマホが大型化したため、安定させるために底を手で持って支えたり、どこかに立てかけたりして会話しがちだ。その時、注意しないとメインマイクを塞いでしまうことになる。スマホスタンドを使うと、手も楽だし、マイクも塞がずに快適に通話できる。
(家事ジャーナリスト 山田 亮)
[NIKKEI プラス1 2022年3月26日付]
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