メキシコのコーラ3リットルで220円 値上げでも人気

日経MJ

メキシコでは3リットルの「コカ・コーラ」が売られている(メキシコシティ内のスーパー)

メキシコで炭酸飲料「コカ・コーラ」の値上がりが続いている。3リットルのペットボトルは1月時点で約40ペソ(約220円)と2年前の同時期に比べて2割以上高いが、それでも人気は衰えない。政府は国民の肥満対策で糖分の高い炭酸飲料などへの警告表示を義務付けているが、根強い消費文化への影響は限定的だ。

独調査会社スタティスタによると、メキシコの2019年度のコカ・コーラの消費量は世界一だった。メキシコには235ミリリットルから3リットルまで24種類の容量のコカ・コーラが売られている。日本の16種類より5割も多い。600ミリリットルのペットボトルは21年に2度の値上げで年初の14ペソから年末には16ペソに上がった。

メキシコにはコカ・コーラの値段がミネラルウオーターより安い時代があり、幅広い年代で飲まれていた。いまでも好んでコカ・コーラを飲む消費者が多いという。

メキシコの中でも最もコカ・コーラが地元の文化に根付いているのがチアパス州だ。チアパス州では1人当たり1日2リットル以上のソフトドリンクを消費する。年間の消費量は832リットルと米国の8倍以上の水準だ。大半がコカ・コーラで、先住民の宗教儀式で供え物として使われるほど現地の文化に入り込んでいる。

ただ、炭酸飲料に限らず糖分の過剰な摂取が健康に及ぼす影響は小さくない。国家公衆衛生研究所(INSP)によると、メキシコの糖尿病患者は全国で860万人と20歳以上の層の1割を占めている。メキシコ政府によると、国民の7割は体重過多で、3割が肥満だという。

政府は肥満対策に乗り出している。メキシコでは20年からカロリーや糖分が高い食品や飲み物などのパッケージやボトルに警告表示をつけるように義務付けられた。企業に求められる対応は今後数年間にわたってさらに厳しくなる見通しだ。

「コカ・コーラを飲むのは習慣になっている」。60代の女性は消費量が多い理由についてこう話す。最近は健康に気を配る人も徐々に増えつつあるが、消費文化が大きく変わるには時間がかかりそうだ。

(メキシコシティ=清水孝輔)

[日経MJ 2022年1月24日付]