プロトピアを想像する
ミラーワールドの鍵はAR技術であるため、今は無名のAR企業がGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)のような巨大IT(情報技術)企業になることも考えられる。他にも、AIとロボットが活躍する農場、旅客便になるドローン(小型無人機)など、産業やビジネスについて大胆な予測が並ぶ。だがその予測は、テクノロジーの歴史を学び、過去・現在の延長線として未来を見るという穏当さによって支えられている。
著者の姿勢がよくわかる言葉が「プロトピア」だ。「プログレス」(進歩)と「トピア」(場所)を組み合わせた造語で、理想のユートピアではなく、今日よりほんの少しよい状態を想像するとの意味がある。この控えめだが確かな楽観主義が、激変する社会を見通す力の源泉なのだろう。
ところで最近、フェイスブックが社名を「メタ」に変更した。由来である「メタバース」には現実と仮想が交わるソーシャル空間という意味があるようだが、まさにミラーワールドの兆しだろう。本書で、未来の手触りを感じてみてほしい。
今週の評者 = 久保丈夫
情報工場エディター。自動車部品メーカーに長年勤務、欧州向けビジネスに携わり開発から販売まで経験、海外駐在歴11年。現在はビジネスコンサルタントとして活躍中。神奈川県出身。
情報工場エディター。自動車部品メーカーに長年勤務、欧州向けビジネスに携わり開発から販売まで経験、海外駐在歴11年。現在はビジネスコンサルタントとして活躍中。神奈川県出身。