――バウムクーヘンの無添加が難しかったようで。

「実はコーティングチョコに乳化剤が使われていて、取り除くのが難関でした。メーカーの協力が必要で、最初は難色を示されましたが、粘り強く取り組んでいただきました。バウムクーヘンの無添加を機に純正自然の社是を再びかかげました。添加物は夏のゼリーといった外注している商品など一部にまだ残っており、さらに詰めていきます」

パリの店舗、閉店を決断

――経営トップとして心がけていることは。

「今ある事実をこうだと決めつけないことでしょうか。こだわりを強く持たないようにしています。その瞬間瞬間を楽しみ、経験していこうといつも心がけています。そして今、この新型コロナウイルス禍で改めて気づかされたのは、つらい時はみんなで乗り越えようと、いいことはみんなで分かち合おうということです」

先々代の祖父・春男氏㊥、先代の父・武氏㊨から2015年に社長のバトンを引き継いだ(神戸市内の本店で)

――これまでで最もつらかった経験は。

「1999年にユーハイムに入社し、それまで経験がなかった菓子作りを学べということで、間もなくフランス行きを命じられました。実はこれが最初の試練だったのです。当時、わが社はフランス洋菓子界の巨星、ルシアン・ペルティエの店舗をパリで引き継ぎ経営していました。ところが業績は振るわず、社長だった父を除いて幹部の間で撤退がひそかに議論されていたのです。私もフランスに渡ってすぐに閉店しかないと直感しました。父に閉店を率直に進言したところ、大げんかになりました」

「私は店舗を1回だけ改装しようと父に伝えました。3年で経営を立て直す売り上げ目標を立てて、役員会に提案し、決議してもらいました。1年目は売り上げを大きく伸ばして目標をクリアしました。2年目も伸ばしましたが、目標には届きませんでした。再建に当たっては、かつてペルティエで修業したパティシエのフィリップ・コンティチーニを迎えました。『味覚の魔術師』と評された天才で、店舗は人気を集めていました。ただ、私は経営者の視点で閉店を決断しました。『日本人がパリの名店を閉めた』と、その時は大バッシングを受けました」

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100周年で理念書き換え