思索深める独学の方法とは 哲学者の思考スキルに学ぶ『独学の思考法』

ロジカルシンキング、柔軟な発想……。「考える力」はあらゆる分野で求められる。だが考えることが得意という人はそう多くないだろう。思考力を底上げするために、思考のプロ、哲学者に教えを乞うてはどうだろう。

気鋭の哲学者が、自分の頭で深く考え、学びを得ていく方法を明かしたのが本書『独学の思考法』。独学を「答えのない時代に、自分の力で探究を行うための方法」と位置づけ、そうした思索を支える頭の使い方とその鍛錬方法を、哲学研究の知見をベースに説明している。

著者の説く思考法の柱は2つある。「自ら思考する力」と「対話的思考」だ。自ら思考する力とは、受け身で知識をインプットするだけではなく、問いかけながら思索を展開する力のことで、「問いを立てる力」「分節する力」「要約する力」「論証する力」「物語化する力」の5つのスキルに分解できるという。

対話的思考とは、自ら思考する力を応用したコミュニケーションの技術だ。1人で机に向かうだけでなく、他者との対話の中でこそ探究が進むとの著者の考えがある。

良い問いを生む3つの観点

本書の思考法の中でも真っ先に磨きたいのが、「自ら思考する力」の1つである「問いを立てる力」だ。問いが思考を誘発するため、考えを深める出発点となる良い問いが欠かせない。では、そんな問いはどう立てるのか。著者は、ある判断に対して、普遍性、具体性、価値観という3つの観点で問うことを薦めている。

「本を読めば人は必ず頭が良くなる」との主張があるとする。例えば「それはどんな本を読んでも当てはまるのか?」と問うのが普遍性をめぐる問いだ。具体性を問うならば、「頭が良くなるとは具体的にどんな状態なのか?」となるだろう。「なぜ相手の主張に共感できないのか」と、話の前提となる価値観に目を向けることも有効だ。こうした問いにより、考えの抜け漏れがなくなったり、主張への理解が進んだりする。

不適切な問いもある。「どうして女性には感情的な人が多いのか?」といった差別意識を含む問いがそうだ。暴力的でさえあり、思考の幅も広げない。やみくもに問うのではなく、問いの「質」を意識するのがよさそうだ。

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「寛大に」解釈する