夏バテ対策、エアコンより冷たい飲食物に気をつけよう
例年にない暑さが続く今夏。食欲不振やだるさなどを感じる人も少なくない。夏バテの大きな要因は自律神経の乱れ。冷たい飲食物のとり過ぎも拍車をかける。食事や睡眠に留意して、秋に不調を残さないようにしたい。
猛暑や湿度の高さなど、気候の変動は体に様々な影響を与える。なかでも多くの人が経験するのが「夏バテ」だ。
「食欲の低下や疲労感、頭痛、めまい、肩こりなど、様々な不調が起こるが、その人の弱い部分に出やすい」と慶応義塾大学医学部漢方医学センター客員教授で修琴堂大塚医院の渡辺賢治院長は話す。
夏バテの原因は多様だが、最も大きいのが自律神経の乱れだ。自律神経は体温調節に関与し、暑さや湿気が自律神経の働きの負荷になる。冷房による急激な寒暖差も要因で、神奈川歯科大学大学院統合医療学講座の川嶋朗特任教授は「快適な空調の中で過ごす生活が続くと、外出時の暑さとの差で体温調節をコントロールする自律神経が乱れる」と説明する。
自律神経を整えるにはどうすればよいのか。専門家が口をそろえるのが、規則正しい生活と十分な睡眠、そして運動だ。「目新しいアドバイスではないが大切。適度な運動は自律神経を乱すストレスの解消に役立つとともに、自律神経のバランス調整機能も高める」と川嶋特任教授。睡眠が足りないなら、積極的に15分程度の昼寝も取り入れる。

その上で注意したいのが、食べ物や飲み物のとり方。夏はつい冷たい飲食物をとることが多いが、それが胃腸の働きを低下させる。「胃腸はエネルギーを作り出すために重要な臓器。胃腸が弱れば体力も落ち、自律神経の調節力も低下する。一方、暑さで自律神経が乱れれば、それが胃腸の働きの低下を引き起こし、悪循環になる」と渡辺院長。既に食欲不振や下痢の症状があるなら、温かいおかゆや重湯で胃腸を休める。
冷たい飲み物は口当たりがよく、一気にとりがちなのも夏バテにつながる。「体の中に必要以上に水がたまる『水毒』を招き、頭痛やむくみ、胃の不調などを起こす」(渡辺院長)

ただ、暑い時期は熱中症予防のための水分補給が欠かせない。胃腸の働きを低下させず補給するには、常温か温かいものを少しずつこまめにとること。汗をかいたら塩分などのミネラルも補給する。
渡辺院長は「たかが夏バテと放置すると、秋になっても不調が続く『秋バテ』になることもある」と注意を促す。それを避けるためには、今から秋に向けての養生が大切だ。川嶋特任教授は「暑くても体を冷やさないこと。飲食物に気を使うだけでなく、睡眠時におなかを冷やさないようにしてほしい」と助言する。
運動で体力と自律神経の調節力を高めることも大切。「目安は自分にとって少しきついが続けられる運動。1カ月続ければ自律神経が整う。日常生活では『階段は無料のジム』だと思って積極的に活用してほしい」(川嶋特任教授)
ウオーキングもいい。渡辺院長が勧めるのは、顔をまっすぐ前に向けて胸を張り、おへその上あたりをコンパスの頂点とイメージして大股で早歩きする方法。まずは10分程度から始める。
夏バテだと思った不調に思わぬ病気が隠れていることもある。「1カ月以上不調が続く場合や、急激に激しい症状が出たら要注意」と東邦大学医療センター大森病院総合診療・急病センターの佐々木陽典講師は警鐘を鳴らす。
1カ月以上続くだるさは甲状腺疾患、急激な激しい倦怠感(けんたいかん)は心筋梗塞、突然の激しいめまいや頭痛は脳卒中の可能性がある。佐々木講師は「こうした場合には、すぐに受診してほしい」と話す。
(ライター 武田 京子)
[NIKKEI プラス1 2022年8月13日付]
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