名水の里が育む香り 千葉・須藤本家の房総ウイスキー

2021/10/24
久留里地区の豊かな水は千葉県唯一の平成の名水百選。久留里駅近くの水くみ場にはひっきりなしに住民が訪れる(千葉県君津市)

JR内房線を木更津駅で乗り換え、房総半島の真ん中を縦に貫くように里山を走る久留里線に揺られて約50分。路線名の由来でもある久留里駅がある久留里地区(千葉県君津市)は良質な地下水に恵まれた名水の里だ。約1年前から地元の老舗酒蔵が千葉県内で初となる地ウイスキーの製造・販売に挑んでいる。

駅から歩いて10分ほどで、1885年(明治18年)に創業した須藤本家の杉玉をつるした店構えが見えてくる。看板銘柄「天乃原」は全国新酒鑑評会で何度も金賞に輝いた。久留里街道に面した直売スペースではそうした製品に加え、2020年8月に売り出した「房総ウイスキー」が琥珀(こはく)色に輝く。

ウイスキーの製造に乗り出したのは苦境打開のためだった。日本酒の消費が落ち込む中、売り上げを補うため約15年前にまず焼酎を作り始めた。千葉県産サツマイモのほか、むかごや自然薯(じねんじょ)、世界初だったというソバ100%など個性豊かな商品で知られたが、焼酎ブームも徐々に陰りが出てきた。

着目したのがハイボール人気で消費が上向いていたウイスキーだった。同じ蒸留酒であり、「焼酎の設備を生かせると考えた」と須藤正敏社長は振り返る。18年に県内第1号のウイスキー製造免許を取得。輸入原料を使った自社製モルト(大麦麦芽)に独自ルートで確保する英国産スコッチをブレンドし、3年をかけて商品化した。

清酒「天乃原」でも知られる須藤本家の須藤正敏社長。焼酎に続いて生き残りのためウイスキー製造に挑んだ

決め手は敷地内の地下500メートルからこんこんと湧き、日本酒の仕込みにも使う自慢の天然水。甘く、くせのない香りですっきりした味わいに仕上げた。アルコール度数40度で700ミリリットル入りが2200円。県内を中心に想定を超す毎月約3000本が出荷され、リピーターも多いという。