2022/1/23

力を入れているのが、きめ細かくてまろやかな味わいの桂月の大吟醸。日本食ブームにも乗り欧州で好評を博している。「棚田とはどういうものなのか」。海外バイヤーから産地の情報を求められるようになった。

酒米「吟の夢」は棚田で育まれる(高知県土佐町)

「チーズで知られるイタリアのパルメザン、ワインで有名なフランスのボルドー地方、いずれも産地の気候風土や原料にこだわり消費者にアピールする。この手法をテロワールという。遅ればせながら桂月もテロワールを発信しようと思った」。松本社長はこう話す。

仕込みに使う水は吉野川の軟水だ。「今、日本酒は辛口が好まれる傾向にある。辛口に向いているのは硬水。でも我々は、地域外から硬水を求めないし、軟水で辛口の酒を追求しない」と松本社長は話す。

ミネラル豊富な硬水で醸造すると、酵母菌がブドウ糖をどんどん食べて発酵が早くなる。それにより辛みが甘みを上回りキリッと、そしてどっしりとした辛口の清酒が生まれるという。軟水を使う桂月は現在、醸造に時間をかけたまろやかな風合いの大吟醸にかける。逸品は白ワインのような華やかで軽快な味わいという評価を国内外で得られるようになった。

土佐酒造は桂月を育む土佐町の風景をドローンで空撮し、インターネットで動画を紹介する。

春夏秋冬の棚田の動画を見る。土佐町は雪が降る。動画は雪化粧から盛夏の濃い緑、そして初秋の実りの黄金色へと移ろう。山間部特有の季節と昼夜の寒暖差が良質な酒米を産出すると知る。吉野川の水を蓄える早明浦(さめうら)ダムの姿にも、一部が湖底に沈んだ町周辺の歴史を感じ様々な思いが去来する。

(高知支局長 保田井建)

[日本経済新聞電子版 2022年1月13日付]