2022/2/20

「真澄」も7号酵母を中心に酒造りを進めたが、吟醸酒ブームなどもあって2000年代以降は「華やかな味わいが出せる酵母をブレンドして使うようになった」。しかし、17年にある決断を下す。個性をより打ち出すための「原点回帰」だ。

とはいえ、一般的な7号酵母は使わない。スクリーニング技術を駆使して自社で選抜工程を繰り返し、「通常よりもややフルーティーさがあり、えぐみも少ない」といった特徴を持つ複数の「7号系自社株酵母」を生み出している。選抜は現在も続けており、今冬の酒造りでは95%の酒が7号系自社株酵母を使っている。

「7号酵母」が見つかった蔵の中で「御柱祭」向け商品を持つ宮坂社長

宮坂社長の祖父で7号酵母発見時の責任者だった故宮坂勝氏の口癖は「うまい食中酒を造ろう」。当時に比べて日本の食卓には肉や脂分を含んだ食事が増えた。宮坂社長は「現代の日本の食事に合う食中酒は酸味がある味わいが向く。酸を多めにつくる傾向がある7号酵母が最適」と話す。

一方、今冬の酒造りでは思いもよらぬことも起こった。冬季だけ販売する純米吟醸酒「あらばしり」の醸造工程で酒米が溶け過ぎ、くどい味になる懸念が生じたのだ。しかし、出来上がると「近年にない非常においしい酒になった」という。「まだまだ酵母の使い方がわかっていなかったかもしれない。技術改良に終わりはない」

宮坂社長は日本酒ツーリズムに強い関心を持つ。新型コロナウイルス禍で生産量が落ちていることもあり、現在は近隣の富士見町の蔵が酒造りの中心。「諏訪の蔵は将来的には酒造りを理解してもらうための施設にして、諏訪の酒ツーリズムを盛り上げたい」と力を込める。

(松本支局長 大林卓)

[日本経済新聞電子版 2022年2月10日付]