未知の領域、経験プラスに

――リーダー人材にはどのような経験が求められるのでしょうか。

「特定の分野や仕事にこだわらず、いろいろな経験を積むことが大切だと思います。仕事が順風満帆なときは、ストレスがなくて幸せです。でも思わぬ異動などで精神的にきつい思いをした方が、後になるとプラスになっていることが多い」

ソニーグループ時代は海外出張も多かった(1998年ごろ、ロンドン)

「ソニーグループで販売推進課長だった30代半ば、急きょ異動を命じられて株式上場に携わりました。それまで営業一筋でしたから本当に苦労しました。1991年に無事上場した後も、証券業務室長という慣れない仕事を任されました」

「金融や財務の専門用語が全く分からず、貸借対照表や損益計算書もほとんど読めませんでした。市場関係者とのやりとりで、何度冷や汗をかいたか分かりません。しかもある日、上司から『明日から全部任せるよ』と言われ、私一人で東京証券取引所やアナリストからの問い合わせに対応することになりました。必死で勉強して食らいつき、自信につながりました。この経験が、今の自分を支えていると実感します」

「上司の『愛のムチ』だったのだと思います。時には良い意味で部下を突き放すことも必要かもしれません」

――後進の育成に向けて、どのようなことに取り組んでいますか。

「社員教育の底上げが重要だと考え、社内に『ビジネスカレッジ』を立ち上げました。会計や法務などについて、各分野の専門家を招いて学びます。第1弾として、若手社員などを対象に40人の受講生を募集したところ、140人以上の手が上がりました」

「以前は待ちの姿勢でいる社員も多かったのですが、目の色が変わってきたという手応えがあります。管理職や役員候補者向けにも開講し、社内のMBA(経営学修士)制度のような仕組みに育てられればと考えています」

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経営の過程 若手に伝授