2021/10/10

満充電からの航続可能距離は780km

それだけにEQのフラッグシップモデルとなるEQSは、現時点で考え得る世界最高のEVとなることを目指して開発された。新開発のEV向けモジュラーアーキテクチャーを採用した点もその一環である。既存のEQCやEQAなどとは異なり、バッテリー式電気自動車(BEV)専用の車体を使用することで、パッケージングをBEVに最適化できるほか、軽量化や空力性能の強化により航続距離が拡大でき、さらにはメルセデス・ベンツとしても重要な衝突安全性能もBEVに最適化できるのである。

現時点でEQSには「EQS580 4MATIC」と「EQS450+」という2グレードが設定されているが、今回メインで試乗したのは、2022年秋ごろに日本市場へ導入予定の後輪駆動モデル、EQS450+である。フロア下に搭載されるリチウムイオンバッテリーの容量は、なんと107.8kWh。航続距離はWLTPモードで最大780kmにも達する。ちなみにEQS580 4MATICの日本導入予定はないが、これとは別に4WDモデルの導入予定はあるそうだ。

全長×全幅×全高=5216×1926×1512mmという堂々としたボディーを持つEQSは、一見して従来の乗用車とは異なる存在感を放っている。いわゆるスリーボックスセダンとはプロポーションが明らかに違うのだ。「ワン・ボウ(ひと張りの弓)」と呼ばれるフロントノーズからルーフ、リアエンドまでつながる大きなアーチを持つファストバックのシルエットは、旧来のラグジュアリーサルーンのイメージからは外れるものの重厚感があり、未来の高級車像を生み出そうとしたデザイナーの熱意が十二分に感じられる。

インテリアも極めて斬新だ。試乗車にはオプションの「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)ハイパースクリーン」が搭載されていたのだが、ダッシュボード全体が1枚のゴリラガラスで覆われたワイドスクリーンとなるこれは、まさに未来のクルマといった印象を演出している。

実際には、ガラスの裏側にドライバー正面の12.3インチTFTディスプレイと中央の17.7インチOLEDタッチディスプレイ、助手席正面の12.3インチOLEDタッチディスプレイの3枚の画面が収められるMBUXハイパースクリーン。MBUXのシステム自体もAIによる高度な学習機能により、メニューを掘り下げずとも必要な機能が必要なときに表示される「ゼロレイヤー」を実現している。完全に階層がないわけではないが、中央のディスプレイに多くの機能を同時に表示できるため、とても直感的に使え、デジタル統合型のインフォテインメントシステムとして、抜群に使いやすいものに仕上がっている。今後、世界の自動車インフォテインメントシステムは、このMBUXハイパースクリーンがベンチマークとなるはずだ。

航続距離延長と静粛性向上のために空力性能を追求。空気抵抗係数のCd値は量産車としてはかつてない0.20を達成しているという。前面投影面積は2.51平方m。
「MBUXハイパースクリーン」と名づけられた、3枚の大型スクリーンで構成されるダッシュボード。センターコンソールも含めてメカニカルなスイッチ類はほとんど残されていない。
シートはサイドサポートの高さを抑えた独特な形状だ。斜めにクロスする型押しラインに合わせて細かなパーフォレーション(穴開け)が施されていることが分かる。
リアシートの足元空間は写真のとおり広い。EV専用プラットフォームを使うだけあって、フロア高も適切だ。
荷室の容量は610~1770リッター(VDA法)と公表されている。

運動性能も上質

走りのほうも素晴らしい出来栄えである。スタートボタンを押して伝統のコラム式シフトセレクターをDレンジに入れてアクセルペダルを軽く踏み込むと、メルセデス・ベンツの最高級モデルらしくジワーッと、それでいて軽く、タイヤがスッと転がり始める。もちろんEVなのでほぼ無音だ。

右足をさらに踏み込むと、踏み込み量に対してリニアに加速力が強まる。だがそこはSクラス。スイッチのようにガンッと急激にトルクが高まるのではなく、右足の動きにリニアでありながら、角の取れた滑らかな加速を披露する。

ドライブモードは「コンフォート」が標準で、「スポーツ」と「ECO」「インディビジュアル」が選べるようになっている。コンフォートは動力性能と快適性がとてもよくバランスした印象だが、ECOでは加速がややもたつく印象を受けた。スポーツを選択すると、モーターやリダクションギア、デフをひとまとめにした、リアアクスルに備わる電動パワートレイン「eATS」が333PS(245kW)の最高出力と568N・mの最大トルクをフルに生かし、なかなかにスポーティーな走りが楽しめるようになる。あまりに軽快なので、車両重量が2480kgもあることを忘れてしまうほどだ。

ステアリングフィールも非常に上質だ。操舵感に渋さはまるでなく、それでいて適度な反力があってスムーズに回すことができる。ハンドリングは加減速の状態を問わず終始一貫して弱アンダーステアで、狙い通りの走行ラインをトレースすることが可能だ。

ホイールベースが3210mmもあるので、取り回しがよくないのかと思いきや、Sクラスと同様にリアアクスルステアリング機構が備わり、後輪が最大10度(標準仕様は4.5度)もステアし、回転直径が10.9m(標準仕様は11.9m)と小さいので、とても扱いやすい。ちなみにリアアクスルステアリングは、購入後でもOTA(オーバー・ジ・エア)アップデートによって10度に変更できるそうだ。EQSにはこのほかにも、走行特性が穏やかになる「ビギナードライバーモード」や、ホテルなどで駐車係にクルマを預けるときのための「バレーモード」なども、OTAで提供される予定だという。今後はOTAによる後付けオプション装着(実際には機能のオンオフ)やソフトウエアのアップデートが一般的になりそうだ。

駆動用バッテリーの容量は107.8kWh。最大200kWまでの急速充電に対応しており、15分のチャージで300km以上の走行が可能とされている。
ステアリングホイールは「Sクラス」と同じタイプ。パドル操作によって回生ブレーキの強さを3段階に変更できる。
残りの航続可能距離はメーターパネルにグラフィカルに表示される。標準的な走りをした場合に加えて、MAXとMINも分かるのが便利だ。
最大容量を低減するなど、バッテリーへの負担が少ない充電プログラムが選べるようになっている。
モジュラータイプの電動パワートレイン「eATS」を採用。「EQS450+」はリアアクスルにのみ搭載しており、最高出力333PSを発生する。
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