「よく世間からは『なぜコメ卸が外食に』と言われますよ。でも不思議です。魚屋が回転ずしやっても何も思わないでしょ。なぜコメ屋が回転ずしやったら異業種進出と言われるんですかって。すしって魚と米ですやん。食糧管理制度の居心地が良かったのでコメ屋がそこから出なかっただけ。私はそこから出るんや、そう思っています。丼屋もおにぎり屋も、本当ならコメ屋がやるべき仕事だと思います」

――社長就任から約15年。いつの日か第一線から退くことも考えますか。

「ある程度の規模に到達したら、それが一線を退くときになるんかなと思っています。今、25年3月期に売上高5000億円、30年3月期に1兆円を目指しています」

――なぜ1兆円なんでしょうか。

「今、世界の人口は増えています。50年には97億人になる。そうなれば約60億トンの食料が要るようになる。今は約40億トンですけど、これが減っていくかも分からない。大変なことになりますよ」

「そうなれば、今回の新型コロナウイルスのワクチンでも分かりましたけど、世界は自国優先の動きをするものです。食料不足はコロナワクチン以上に命に直結してますからね。グローバルな食料危機が来たときに、このままでは日本中に食料が行き渡らなくなります。現状維持でやっていたら時間がありません」

「そうならないように、我々は『農業を守らなあかん』『コメをもっと食べなあかん』『コメや野菜食べることが農業を守ることにつながるんや』と訴えていかないといけません。1兆円企業になって、影響力、発言力をつけたいんです。私らが言ったことに多くの人が賛同してくれて、国が動く。この志を次の世代にも継いでいってほしいなと思いますね」

(田村峻久)

戦国武将に憧れ
 ふじお・みつお 1965年兵庫県出身。芦屋大教育卒、神明(現神明HD)に入社。米穀部、営業部などを渡り歩き、2007年に社長に就任。
 歴史が好きだ。なかでも激動の時代を生き抜いた戦国武将、幕末の志士への憧憬は強い。
 「まさか義元も負けるとは思っていなかったでしょうね」。桶狭間の戦いで劣勢から今川義元を破りその名をとどろかせた「異端児」織田信長に、異業種への参画を進める自らを重ねる。
お薦めの本
「経営者になるためのノート」(柳井正著)
 商売人として育っていくための本です。経営をしているとぶれる時って必ずあります。この本を読むと「柳井さんもこう考えてるんや」と勇気づけられます。ある意味で相談相手ですね。

[日本経済新聞夕刊␣2021年10月7日付]

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