日経プラスワン

サバの味噌煮には酢を少量加えると生臭さが抑えられる。味噌大さじ2に対し酢小さじ1程度。酢のツンとしたにおいは煮ている間に揮発してなくなるので、できあがった味噌煮を食べても酢が入っているとは感じられない。

ショウガも生臭さを抑えるのに役立つ。ショウガの香りが生臭いにおいをマスキング、つまり覆い隠す効果があるほか、ショウガに含まれる成分がトリメチルアミンそのものを減らす脱臭効果もあると考えられている。生の魚よりも、ある程度火が通ってから加えた方が効果が高いので加熱の途中で入れるとよい。

ここまで、魚の臭みを減らす方法について紹介してきたが、冷蔵・輸送技術の発達した現在の日本では、十分に鮮度の良い状態で魚を手に入れることができる。したがって、あまり躍起になってにおいを消す必要はないともいえるだろう。むしろ青魚らしいにおいを楽しみたいなら、におい消しの下ごしらえはほどほどにすればよい。逆にお子さんが青魚のにおいが苦手な場合などは、丹念ににおい消しをしたものから徐々に慣らしていくのもよいだろう。

ちなみに筆者は、塩を振るか霜降りにするかどちらか片方の下ごしらえをして、煮汁に酒やみりんを使い、香りづけも兼ねてショウガを加えることが多い。おつとめ品を買ったり、買ってすぐに調理できなかったりして鮮度がやや落ちたときに、酢を少し加えることにしている。

また、昔はにおいの成分を揮発させるために時間をかけてよく煮ていたが、現在の鮮度のよい魚ではそこまでする必要はないし、長時間加熱すると身が硬くパサついてしまう。新鮮なサバを味噌煮にするのであれば、5分ほど煮たら落とし蓋を取り、スプーンで煮汁をまわしかけながら2~3分煮て、一度サバを取り出そう。それからとろりとするまで煮汁を煮詰め、サバを戻し入れて絡める。時間があればそのままなじませておくと、煮汁の味がサバにしみる。なじませる時間がない場合は、煮汁を回しかける時間を少し長めにするとよい。

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霜降りしたら冷水に取る

魚の内臓や筋肉には、タンパク質分解酵素が含まれている。イワシ、サバ、マグロ、スケトウダラなどはこの酵素の働きが強いので、調理の際には注意が必要だ。この酵素がよく働く55~60℃付近を長く保つと身の分解が進み、どろっと崩れやすくなってしまう。

このような状態を避けるためには、霜降りをしたら一度冷水にとって冷まし、煮るときは沸騰した煮汁に魚を入れること。また、常温から加熱する場合は、素早く温度が上がるよう少量ずつ調理し、沸騰するまでは強めの火加減で加熱するのがよい。

(科学する料理研究家 平松 サリー)

[NIKKEIプラス1 2021年11月6日付]