
のどの痛みや違和感だけでなく、頭痛や首・肩のこりがつらい。長引く不調は鼻の奥、のどの上部に位置する「上咽頭」の慢性的な炎症が原因かもしれない。いわゆる「慢性上咽頭炎」の症状や対策を専門家に聞いた。
鼻とのどの境目に当たる上咽頭の表面には細かい毛に覆われた細胞があり、粘液を分泌している。その間には多数のリンパ球も存在する。これらの働きによって、空気中のウイルスや細菌といった異物の侵入を防ぐ役割を果たしている(免疫機能)。
この上咽頭に炎症が起き、異物を撃退したあとも慢性化してうっ血などが残る状態を慢性上咽頭炎と呼ぶ。
田中耳鼻咽喉科(大阪市)の田中亜矢樹院長は「慢性上咽頭炎は医学的に正式に認められた病名ではなく、耳鼻咽喉科の医師でもよく知らない人はいる。ただ全身の様々な疾患や症状に関係する可能性が指摘されるようになってきている」と話す。
旭川医科大学の原渕保明教授(耳鼻咽喉科)は「慢性上咽頭炎の関与が考えられる症状や疾患は主に3つに分類できる」と説明する。まずは上咽頭の炎症自体によるもの。のどの痛みや違和感、長引くせき、鼻水がのどの奥に落ちる後鼻漏、頭痛、首・肩こりなどがある。第2に自律神経系の障害による症状。めまい、全身の倦怠(けんたい)感、睡眠障害、集中力の低下などだ。
第3に免疫機能の異常で自身の正常な組織も攻撃してしまう状態(自己免疫の異常による二次疾患)。血尿や尿たんぱくがみられるIgA腎症、手のひらや足の裏にうみをもつ水ぶくれができる掌蹠(しょうせき)膿疱(のうほう)症、アトピー性皮膚炎などが挙がる。

堀田修クリニック(仙台市)の堀田修院長(内科)はIgA腎症の患者に慢性上咽頭炎が目立つ点に着目。「上咽頭の慢性炎症によって生じた炎症物質が血流に乗って全身に運ばれる結果、腎臓や皮膚などに炎症が起こると考えられる」と解説する。
のどの痛みや頭痛、首・肩こりなど不調が長く続いて医療機関を受診しても、「問題はない」とされるケースがあるだろう。堀田院長は「耳の下付近にある胸鎖乳突筋を指で押してみたときに、痛みがあれば慢性上咽頭炎の可能性がある」と指摘する。
自分でもできる対策としては首の後ろを湯たんぽで温める、生理食塩水での鼻うがいといった方法がある。