業界の「同調圧力」に屈しない

何事も、慣習を無視した取り組みは、同業者や関係者からバッシングを浴びがちだ。エンタメ化経営も、閉塞的な田舎町で批判された。先代社長である著者の父親さえ、客やメディアに売り込みをかけるなんて「恥ずかしい」という考えから、海外のコンテストへの出品や蔵まつりに賛成しなかった。しかし著者らは、集団との調和を過度に重んじる「同調圧力」には屈しない。気楽に楽しめて、うまい、という日本酒の原点を大切にし、日本酒がワインのように世界中で愛されるようになる未来を夢見て、突き進む。

全国には、かつての渡辺酒造店と同じように、まだ眠っている店や企業が多くあるはずだ。彼らが、独自の発信力と販売力をもって市場に打って出られれば、地方の活気につながるのではないか。本書は、日本酒だけでなく、日本中の老舗や中小企業が秘める可能性も感じさせてくれる。

今回の評者 = 前田真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

日本酒がワインを超える日 ~The Entertainment Sake~

著者 : 渡邉 久憲
出版 : クロスメディア・パブリッシング(インプレス)
価格 : 1,628 円(税込み)