公営事業の未来へのヒント

2019年、改正水道法が施行され、自治体は事業の広域化や民間企業への運営委託が可能となった。しかし、全国の多くの自治体はそうしたノウハウを持たない。規模や技術力、財政力で群を抜く都の役割が期待されており、実際、東京水道は、これまでも地方の水道事業者の業務を一部受託してきた。著者は、「現場で求められるノウハウの継承を全国でお手伝い」したいといい、今後も東京水道として、地方の事業者への技術継承などによる支援を視野に入れているようだ。

注目は、東京水道が政策連携団体として、いわゆる「民営化」とは一線を画し、公共性を担保する一方、監査等委員会設置会社として厳格なガバナンス体制を実現していることだろう。水道に限らず、公営事業の未来を考えるうえでヒントになりそうだ。

コロナ禍の影響から、東京水道は、海外や他の自治体への営業活動が満足に行えない状況という。それでも今日も、蛇口をひねれば安心・安全な水が出る。この「あたり前」の大切さとそれを維持する誇りが、本書には込められている。

今週の評者 = 前田真織
2020年から情報工場エディター。2008年以降、編集プロダクションにて書籍・雑誌・ウェブ媒体の文字コンテンツの企画・取材・執筆・編集に携わる。島根県浜田市出身。

東京の水を守る -東京水道株式会社-

著者 : 東京水道株式会社代表取締役社長 野田数
出版 : 日本水道新聞社
価格 : 1,320 円(税込み)

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