マグネシウムは健康維持に欠かせない必須ミネラルの一つ。しかし、カルシウムや鉄と比べ、その重要性は十分に知られていない。様々な働きや生活習慣病との関わり、効率的な取り方などを解説する。
マグネシウムは5大栄養素の一つであるミネラルの中でも、人間の体に不可欠な必須ミネラルに分類される。
主な働きとして、ブドウ糖からエネルギーを作り出すときに必要な体内酵素を活性化させる、骨の柔軟性や弾力性を高める、筋肉の動きをスムーズにする、血圧を適正に保つ、などが挙げられる。
マグネシウムは体内で合成できないため、食品から摂取する。必要摂取量は年齢や性別で異なるが、現代日本人の多くがマグネシウム不足に陥っているという。
東京慈恵会医科大学の横田邦信客員教授は戦後の食生活の欧米化が要因だと指摘する。「玄米に大麦やあわ、ひえを加えて炊く雑穀ごはんはマグネシウムの宝庫。こうした昔ながらの主食がすっかり食べられなくなった」
マグネシウムの含有量は食品が精製・加工されるほど減る。また塩分を取り過ぎると、マグネシウムの尿中排せつ量が増える。「加工食品やファストフード中心の食生活では、マグネシウムを十分に取りづらい」(横田客員教授)
もう一つの要因として考えられるのはストレス。岐阜薬科大学副学長の五十里彰教授は「ストレスがかかり続けると、体内のマグネシウムが尿中に大量排せつされる。よくイライラする人はマグネシウム不足かもしれない」と話す。
マグネシウムが慢性的に不足すると、生活習慣病の引き金になることが近年明らかになってきた。

例えば全糖尿病患者の9割以上を占める2型糖尿病。血糖値を下げるインスリンというホルモンの働きが弱まり、高血糖状態が続く病気だ。高脂肪・高カロリーな食事や運動不足が原因とされてきた。
ただ「それだけでなくマグネシウム不足も一因。最近の多くの研究で、不足するとインスリンの働きや分泌量が低下することが判明した」と横田客員教授。肥満でないのに糖尿病を発症する日本人が少なくないことに対する一つの説明になるという。