食材捨てずに「アップサイクル」 新発想で工夫楽しむ

日経プラスワン

捨てられるはずだったものに新たな価値を与えて活用する「アップサイクル」。最近耳にするようになってきた言葉だ。普段の食生活にもこうした発想を取り入れる動きが広がっている。

アップサイクルは従来廃棄されてしまっていた素材に、アイデアやデザインによって付加価値を与え、新たなものに生まれ変わらせる試みを指す。着古した衣類を捨てず、機能性やデザインにこだわったバッグに作り替えるといった例が挙げられる。SDGs(持続可能な開発目標)の観点からも注目が集まる。

食の分野でみると、食品ロス削減に向けた取り組みと関係する。もともと日本では「もったいない」精神が根づいていて、昔から食べ物を無駄にしない工夫はされてきた。精米後のぬかを活用したぬか漬け、豆腐の副産物であるおからの煮物のほか、パンの耳を揚げたおやつを思い浮かべる人もいるだろう。

近年ではさらに調理法を工夫したり、盛り付けやデザインに凝ったり、見た目や味にこだわった「食のアップサイクル」に挑戦する人が目立つようになってきた。

家庭でできる取り組みのヒントを得ようと、日本サステイナブル・レストラン協会(東京・渋谷)を訪ねた。協会ではレシピコンテストを企画し、食品ロスの削減にもつながるアイデアが多く寄せられた。そのひとつ、東京・銀座のレストラン「FARO(ファロ)」で働くジュリア・ロフィ・パローネさんの残ったパンを使うスイーツのレシピを紹介してもらった。

レシピをそのまま再現するのは難しそうだったが、その一部、残ったパンとコーヒーの出がらしを使ったスポンジケーキは家庭で手に入る材料で手軽にできそうだ。

かたくなってしまったパン70グラムをフードプロセッサーなどを使って粉状にする。薄力粉50グラム、ベーキングパウダー5グラム、重曹2.5グラム、砂糖80グラムに塩少々を準備。豆乳(または牛乳)184グラム、植物油40グラム、酢7.5グラムを加え、使用済みのコーヒーの粉も15グラム入れてよく混ぜる。型に流して160度に温めたオーブンで25分ほど焼く。

試してみると、ほのかにコーヒーの香りがして、どこか懐かしい素朴な味のケーキができた。翌日になっても、しっとりとした食感が楽しめた。ホイップクリームやジャムを添えてもよさそうだ。

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