乗り物酔い…「旅行の大敵」はアイスキューブで防ぐ

日経プラスワン

いよいよゴールデンウイーク到来――。ただ、自分や家族の乗り物酔いが心配で、せっかくの旅行やレジャーを心から楽しめない人もいるのではないか。乗り物酔いのメカニズムと対策、克服方法を専門医に聞いた。

乗り物酔いは「動揺病」とも呼ばれる。クルマやバス、電車、船などで移動中に気分が悪くなり、ひどくなると吐き気に襲われる。絶叫マシンなど遊園地のアトラクションでも起きるほか、宇宙飛行士も「宇宙酔い」という症状に見舞われるそうだ。

その「宇宙酔い」の研究にも取り組んだJCHO東京新宿メディカルセンターの石井正則耳鼻咽喉科診療部長は、乗り物酔いの原因を「目や耳からの不規則な情報で自律神経のバランスが崩れるため」と話す。石井部長によると、乗り物酔いになるまでには3段階を経るという。

第1段階は三半規管や耳石器など内耳で感じ取る乗り物の加速度、揺れ、回転などの刺激情報と、目から入る視覚情報に日常とは違うズレが認識される。クルマの運転手が酔いにくいのは、自分の操作通りに車が動くので、この目と耳の情報のズレが生じにくいためだ。

第2段階では脳の扁桃(へんとう)体という部位に伝えられたズレの情報が、自律神経ネットワークによって「不快」と判断される。このとき、脳の海馬に残る過去の乗り物酔いの不快な記憶が参照される。ガソリン臭などで酔うのも、記憶の中で臭いと不快さが結びついているためだと考えられる。

そして第3段階でついに乗り物酔いの症状が起きる。扁桃体からの不快情報で興奮した自律神経がバランスを崩し、生つばや冷や汗、吐き気などの症状が出てくる。

乗り物酔いを防ぐにはこの自律神経の興奮を抑えることが肝要だ。まずは前日に十分睡眠をとって体調を整える。空腹や満腹は厳禁で、厚着や体を締め付ける服も自律神経を刺激するので注意したい。