伏流水、道産米を引き立てる 札幌・日本清酒

2022/7/24
日本清酒の「千歳鶴」は地元ファンが多い(札幌市)

山海の幸に恵まれた北海道で地酒「千歳鶴」を製造しているのが日本清酒(札幌市)だ。北海道産の酒米と札幌市内の伏流水で造る日本酒は豊かな香りと柔らかな甘みが特徴で、地元ではファンが多い。2023年には新たな蔵が稼働し、顧客層の拡大に力を入れる。

JR札幌駅から車で10分弱、日本清酒は札幌市中心部の豊平川沿いに本社を構えている。かつて本州より気温が低い北海道ではコメがとれず、同社も本州の酒米を仕入れて千歳鶴を製造していた。その後、品種改良などにより北海道でも酒米が育つようになり、2000年から本格的に道産酒米で醸造を始めた。

川村哲夫社長によると、いまや日本酒の醸造に使うコメのうち9割が北海道産。主力は新十津川町でとれる「吟風」と「きたしずく」だ。商品企画部の中嶋康雅さんは「北海道の原料を使って酒を造るのは地元企業のあるべき姿だ」と話す。

酒造りに使う水は本社の地下からくみ上げた豊平川の伏流水で「他社にはまねできない、酒造りに適した水」(中嶋さん)。硬度が低い軟水で、口当たりがまろやかな酒になるという。

杜氏(とうじ)の市沢智子さんも「水がきれいで微粒子が少なく、コメ本来の味わいを表現する際にプラスに働いている」と水の良さを力説する。市沢さんは日本清酒の設立以来初の女性杜氏だ。北海道内の地ビール会社などを経て、16年から杜氏として千歳鶴の醸造を担う。

「千歳鶴 純米大吟醸 瑞翔」は繊細な香りと甘みのある味わいが特徴

商品企画部の中嶋さんのお薦めは「千歳鶴 純米大吟醸 瑞翔(ずいしょう)」(720ミリリットルで税抜き3810円)。使用する道産酒米「きたしずく」は杜氏の市沢さんが最も得意な品種だといい、口にすると華やかな香りと繊細な甘い味わいが楽しめる1本だ。

札幌市内には日本清酒の子会社が運営する飲食店が3店舗ある。「蔵元直営 千歳鶴 吉翔(きっしょう)」ではそそいだ瞬間に過冷却した日本酒が凍る「しばれ酒」など店ならではの商品が楽しめる。本社1階には直売所を備えた「千歳鶴酒ミュージアム」があり、日本酒のほか酒かすを使ったソフトクリームも人気だ。

「蔵元直営 千歳鶴 吉翔」ではそそいだ瞬間に凍る「しばれ酒」㊧を楽しめる

日本清酒が21年9月期に販売した日本酒は32万リットル。720ミリリットル瓶換算で約44万本にのぼる。北海道内で販売額の8割を稼ぎ、地元からの支持が高い。今後は若い世代や海外などの顧客開拓を視野に、付加価値がある高単価商品へラインアップを移行する。

原料や精米歩合(削った後の酒米の割合)の基準を満たした「純米酒」や「吟醸酒」といった「特定名称酒」は年間生産量の6割程度。23年3月から稼働する新蔵では、基準に当てはまらない「一般(普通)酒」の製造をとりやめ、特定名称酒に生産を集中する。

日本清酒は23年から新蔵を稼働する(写真はイメージ)

日本清酒は1872年に創業した造り酒屋「柴田酒造店」が前身で、22年に150周年を迎えた。北海道産原料を使い、札幌で愛されてきた千歳鶴は北海道の外へと羽ばたこうとしている。

(札幌支社 井田正利)

[日本経済新聞電子版 2022年6月30日付]