「辞めてしまえ」会長の叱責、役割悟る 森圭子さんダイキン工業執行役員(折れないキャリア)

2021/10/30

「こちらが当面のスケジュールです」。井上礼之会長の執務室に入るや、スケジュール帳を机に乱暴に置いて、そそくさと退勤した。入社10年目のこと。前日夜に後輩の育成方針を巡って井上会長と衝突した。「お前に何が分かる。辞めてしまえ」と怒鳴られた。翌朝出勤するとそのまま執務室に足を向けたのだ。「会社を辞める覚悟だった」

もり・けいこ 1997年ダイキン工業入社。秘書担当部長等を経て2021年6月、同社初の女性生え抜き執行役員に。

1990年代、ダイキン工業は国際市場に打って出た。世界を駆け回る井上会長の専属秘書兼通訳として新卒採用された。父が商社マン、小1から中1まで米国で暮らした。堪能な英語を生かせる仕事だ。

ただ担当業務はスケジュール管理と通訳にとどまらない。経営層直属のプロジェクトに関わり、企画立案や社内調整も担う。労使交渉の根回しに駆け回ったことも。黒子に徹し、ときには汚れ役もいとわない――それがプロの秘書だと信じて後輩を厳しく指導した。それを井上会長にたしなめられたのが口論の原因だ。「頑張ってきた自分自身が否定された気がして、感情的になってしまった」と今は笑顔で振り返る。3日欠勤した後、人事部長の仲裁で会長秘書に復帰した。

ダイキン工業は女性社員を修羅場で鍛える方針を持っている。森さんの修羅場は35歳で訪れた。新入社員研修の総責任者を任された。新人と指導役など約200人が5泊6日で会社のスピリッツを学ぶ伝統行事だ。総責任者は例年本部長クラスの男性が担う。女性は初。しかもまだ課長になったばかりだった。