はぁ?「女性は運転下手」って? さらば古臭い「駄言」
『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(以後、『#駄言辞典』)。ジェンダーにまつわるステレオタイプから生まれる「駄言」をエピソードとともに400以上紹介している本書から、駄言の実例とその駄言を生んでいる背景の分析を紹介します。今回のテーマは「女性らしさ」に関する駄言とその要因「その2」です。
「ヘェ…それ彼氏の影響?」
「女らしさ」は行動規範のみならず、趣味の選択や好みにも大きく影響します。例えば、出産祝いを用意するとき、生まれた赤ちゃんが女の子なら、無意識にピンク色の品物を選びがちです。また、女の子の遊びといえば、人形遊びやおままごと。ヒーローごっこやボール遊びは男の子の遊びというイメージを持ってしまう人が多いのではないでしょうか。そして、ランドセルの人気色といえば、女子はピンクや紫、赤、男子は黒、紺、青だと想像がつき、実際にそれらが上位にランクインしています。
親がどんなに固定観念にとらわれずに子どもを育てようとしても、保育園・幼稚園や学校に通ったり、テレビ・ウェブ・本などから情報を取り入れたりする中で、子どもも親も、知らないうちに影響を受けてしまうのです。
上のイラストは、ある女性がツイッター経由で投稿した駄言を基に作成したもの。この女性が好きなのは「特撮ヒーロー」。それを人に言うたびに、「それって男性の趣味だよね。彼氏の影響?」と、決めつけられてばかりだそう。女性にだって、釣りやドライブ、筋トレなど、これまでは男性向けとされがちだった趣味を好む人はたくさんいます。性別などによるイメージにとらわれず、自分の好きなものを「これが好き」と言える社会になることを祈ります。
駄言の実例「女医」
【「女性らしさ」に関する駄言~その2~】
書籍『#駄言辞典』にも掲載されている、公募で集まった「駄言」の一部を紹介します。以下、太字部分が駄言です。応募時に寄せられたコメントや投稿先も併せて掲載します。
「彼氏の影響?」
特撮ヒーローが好きだと言うと言われる。その架空の「彼氏」はどこから出てきたんだ?? 私「が」好きなんだよ。普通に「何がきっかけで好きになったの?」って聞いてほしい。人生行き詰まってたときに「仮面ライダー鎧武」見て救われたからだよってちゃんと答えるから。(ツイッターより)
「やっぱり服はピンクじゃないと」
娘が生まれたときに言われた。何色着てもいいよね?(ツイッターより)
「え、女なのにスター・ウォーズ好きとか無理。きもっ!うわー完全に引いたわ。今日もう俺帰っていい?」
デート中に好きな映画の話になり、スター・ウォーズが好きだと言うので自分もだと伝えたときの相手の反応。なぜ女だとダメなのか聞いたら「男の映画だから、男はいいんだよ!」と。(ツイッターより)
「女は運転下手だから」
これ言った男性より狭い道路の地元で培った運転技術はよほど高いし、なんなら縦列駐車で勝負すっか? あとな、運転技術は性別関係ない、経験とセンスじゃ!(ツイッターより)
「女のくせに生意気な」
これって普段から女は格下と思ってるから出る言葉。(ツイッターより)
「女性○○」
女性だけ性別を冠して呼ばれてるこの謎ミソジニー文化滅びてほしい。もちろん逆パターンも滅びろ。大学教授にそう言ったら「言葉の多様性だ! 多様性を認めないのか!」と反論されたのには頭を抱えた。(ツイッターより)
「女医」 (ツイッターより)
「美人すぎる○○」
「かわいすぎる○○」
(ツイッターより)
「○○女子」 (ツイッターより)
駄言の実例「女子は数学が苦手」
そんなカテゴライズされないで男子も女子も好きな勉強ができますように。(ツイッターより)
「機械系で女子って大変じゃない?」
「そういう(機械に関する)ことが好きなの? え、好きなんだ! ……っていうと『理系女子』って感じか」。これ最近まじに言われたやつ。悪気はなさそうなんだけどね。基本、女子は難しいことは苦手とか思ってそう……。(ツイッターより)
「女子は数学が苦手」 (ツイッターより)
「今は女子のほうが成績が良くても、すぐに男子に追い越されるから」
受験生のときに言われたこと。いまだにこの呪いの言葉が、なくなっていないことにあぜんとします。この言葉で女子の心を折ることが目的? 今年、受験生の子から聞かされ、がくぜんとしました。(ツイッターより)
「バカなほうが愛されるよ」 知らんがな。(ツイッターより)
「女子が好きなやつ」
テレビでのグルメ特集でこのセリフが聞こえてくると一気に萎えてしまう。マーケティングなんかの結果、食の好みに性差があるかもしれないけど、いわゆる「女子が好きなやつ」を好きな男性がそれを好きだと言いにくい、食べにくい、恥ずかしいとなる場合もない?(ツイッターより)
駄言の実例「女子は美容に興味あるよね?」
全員がアボカドサーモン食べてません。立ち飲みとか日本酒とか好きなんです。(ツイッターより)
「女性の方はとりあえずウーロン茶でいいかな?」
早く飲みたいオッサンの気持ちが優先され、乾杯時に飲みたいお酒を選べない。(ツイッターより)
「女性にオススメの味です」
味覚を性別で分けないでください。(ツイッターより)
「すごい派手な格好だけど、男ウケ最悪だよ?」
私は! 私のために! 好きなメイクと好きな服着て! 自己肯定感を高めてるんです!!!!!!!!!(ツイッターより)
「あんたは胸が貧相でかわいそう」
着替えているときに母が言った一言。完全に打ちのめされた。別に胸が大きいことに憧れているわけではないのに、そうやって勝手に侮辱されて悔しかった。と同時に、体格に恵まれた母がどのような価値観を刷り込まれたのかうかがい知れて悲しくもなった。胸の大きさで人の価値が決まるわけではない。(東京都・しの・10代以下・女性)
「化粧もっとちゃんとしてきたら?」
面接のオッサンに言われた。(ツイッターより)
「女子は美容に興味あるよね?」
いろんな女性がいるのに「女子」でひとくくりにするな。(ツイッターより)
次回は、「キャリア・仕事能力」に関する駄言を紹介します。
『#駄言辞典』をコミュニケーションのきっかけにして、皆さんの力で古い固定観念に揺さぶりをかけ、ステレオタイプを覆していきましょう。
(構成 小田舞子=日経xwoman)
[日経xwoman 2021年6月15日付の掲載記事を基に再構成]
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