「おうち外食」商機広がる 日経POSセレクション2021

日本経済新聞社は小売業のPOS(販売時点情報管理)データに基づき、この1年間に売り上げを伸ばした人気商品「日経POSセレクション2021」を発表した。特に消費者の支持を集めた「プレミアム賞」(10商品)と「ゴールド賞」(50商品)、「セレクション賞」(360商品)を選出した。自宅で料理や食事をする機会が増えるなか、飲食店のような本格的な味わいを楽しめたり、健康に配慮したりした商品などが並んだ。
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ゴールド賞に選出したフードリエ(大阪府高槻市)の「麺好亭 大判厚切叉焼」は、「専門店並みの食べ応え」をうたった大判で厚切りのチャーシューだ。日経POS情報の平均価格は275.7円と、「焼き豚」のカテゴリーで売り上げ上位の一部商品と比べて20円ほど高い。フードリエの担当者は「お店と変わらない味とボリュームで、他にはないプチ贅沢(ぜいたく)を感じられる」と語る。
自宅で飲食店のような本格的な味わいの料理を楽しみたいといった需要をつかみ、「麺好亭 大判厚切叉焼」は2020年9月に焼き豚カテゴリーで首位に立った。21年6月に2位になったが、同年8月には返り咲いた。
酒類の一部でも、価格が高めの商品が堅調な売れ行きを見せた。

ゴールド賞となったチョーヤ梅酒(大阪府羽曳野市)の「ザチョーヤ シングルイヤー 本格梅酒」の容量は720㍉㍑。20年度の平均価格は955.2円と、「梅酒」のカテゴリー1位で容量1㍑の「さらりとした梅酒」(チョーヤ梅酒)の746.0円より209.2円高い。
やや高めながらも本格的な味わいが支持を集め、来店客千人当たり販売金額は前年度比69.1%増と高い伸びを示した。21年8月には梅酒のシェア2位に立った。
在宅勤務中のリフレッシュなどで甘い菓子を食べる人が増えた一方で、運動不足やコロナ太りが気になる人も少なくない。プレミアム賞に選出した「SUNAO チョコ&バニラソフト」(江崎グリコ)は、トウモロコシ由来などの食物繊維を使用する。アイスクリームでありながら糖質を9.1㌘と同社製品比で60%減らした。糖質の摂取を抑えながら、甘いものを食べられるといった満足感が人気の理由のひとつといえそうだ。
セレクション賞の「スタイルバランスプラス 完熟りんごスパークリング」(アサヒビール)はサワーテイストのノンアルコール飲料だ。アルコールゼロで、カロリーゼロと糖類ゼロもうたう。

食事の脂肪や糖分の吸収を抑える食物繊維、難消化性デキストリンが含まれている機能性表示食品でもある点が特徴だ。「スタイルバランスプラス」ブランド全体の直近8月の売り上げは前年比26.8%増の伸びを見せている。
日経POS情報でアルコールテイスト飲料全体の売り上げは2021年に入り、20年比で2桁増が続いている。ビールテイスト飲料が金額シェアの約8割を占めており、アルコールテイスト炭酸飲料は2割弱にとどまる。
伸び率ではアルコールテイスト炭酸飲料がビールテイスト飲料を大きく上回っており、今後の市場拡大も予想される。
家庭用品では、歯磨きやデンタルリンスなどオーラルケア関連の商品が売り上げを伸ばした。2019年度はオーラルケア分野から日経POSセレクションの選出は1商品だったが、20年度は合計5商品を選出した。
オーラルケア関連商品の売り上げが伸びた背景には、新型コロナウイルス下での衛生意識の高まりや健康志向などが反映されたとみられる。マスクを着けた生活が長期化するなか、自分の口臭が気になるなどの理由で自宅でのセルフケアに励む人も増えているようだ。

ゴールド賞のサンスターの「ガム・お口/のど殺菌スプレー」は、手軽に口の中を殺菌・消毒できるのが特徴。サンスターは「スプレーの後味が口の中に残らずスッキリとした感覚が続く点も評価されている」と説明。在宅勤務の合間の気分転換も兼ねて使用する人も多そうだ。
20年度の来店客千人当たり販売金額は前年度比で69.6%増加した。21年5月から4カ月連続で来店客千人当たり販売金額は前年同月比2桁増となっている。
プレミアム賞のライオンの「システマハグキプラスハミガキ増量品」は20年度の来店客千人当たり販売金額が19年度の約2.8倍に拡大した。
セレクション賞ではジョンソン・エンド・ジョンソンのデンタルリンス「薬用リステリン トータルケアプラス」と、発売元がアース製薬の歯みがき「シュミテクト 歯周病ケア」など3商品を選出した。

日経POSセレクションは、スーパーやコンビニエンスストア、ドラッグストアのPOSデータを集計した「日経POS情報」を使い、2020年4月から21年3月までにスーパーで販売された加工食品・飲料・酒類、家庭用品など約308万点を選考の対象とした。来店客千人当たり販売金額の前年度比伸び率と店舗カバー率、日経商品分類の小分類(2000分類)内順位、メーカー別シェア伸び率をもとに選出した。売り上げ伸び率が特に高かった10商品を「プレミアム賞」、50商品を「ゴールド賞」として選んだほか、「セレクション賞」(360商品)も選出した。
コロナ下の巣ごもり需要を受け、日本チェーンストア協会によると全国スーパーの20年度の食料品販売金額は19年度比4%増えた。日経POSデータでも加工食品などの売り上げが伸びた結果、21年の日経POSセレクションで選出された商品は420商品と、20年(282商品)と比べて大幅に増加した。
自宅でお酒を楽しむ「家飲み」需要も増した。最近はレモンサワーの人気も高まり、プレミアム賞に選出した日本コカ・コーラの「檸檬堂 定番レモン」の売り上げは、前年度比で約2.5倍に増えた。
家庭用品では、コロナ下で外出する機会が減った人も少なくなく、「女性用メーキャップ化粧品」や「女性用基礎化粧品」など化粧品関連が売り上げを落とした。一方で感染予防関連のマスクなど「家庭医療用品」や、消毒液といった「介護・衛生用品」は売り上げを伸ばした。




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