米留学・現地就職 帰国後に転職で50社不採用のなぜ

米国での就業経験が日本の転職活動で評価されず悩むことに(写真はイメージ=PIXTA)
日経 X woman

「私の転職ストーリー」に今回登場するのは、高校卒業後に米国の大学へ留学し、現地での就業経験がある三枝綾子さん(仮名)。彼女は30歳で帰国後、日本の会社に就職しようとしますが、50社を受け不採用が続きます。ようやく採用が決まった貿易会社では待遇に疑問を抱き、転職を決意。そこでも苦労します。米国での就業経験や帰国後に苦戦した転職活動について聞きました。

米国で就職 自動車関連会社でキャリア積む

高校卒業後、日本で留学準備のための専門学校に1年通い、米国の大学に留学。卒業後はカリフォルニア州にある自動車関連機器の製造・修理会社に就職した三枝綾子さん(仮名)。工場が併設されている会社だったため、米国では事務や総務の仕事に加え、工場マネジャーの補佐役も務めていたといいます。

「職場は米国人だけでなく、中国人や韓国人なども働いている多様性に富んだ環境でした。それぞれの国によって常識や価値観が違うので、仕事で社員同士が言い合いになることは日常茶飯事。私は工場マネジャーの補佐役を務めていたため、工場勤務の年配社員に指示をすることも多かったのですが、入社当時は面と向かって『(仕事の理解も実績も足りていない)おまえに指示されたくない』と言われたこともあります」

年齢や性別、人種など関係なく、ハッキリと自分の意見や感情を伝える環境に、最初のうちはカルチャーショックを受けていたという三枝さん。しかし、米国で社会人経験を重ねていく中で、次のように解決していったといいます。

「私のために動いてもらうのではなく、『製品を使う顧客のために』という共通目標を設定し、どうすればよりよいものを提供できるのかという視点でコミュニケーションを取ると、徐々に指示を聞き入れてもらえるようになりました。もともと仕事でぶつかったとしても、仕事後にその感情を引きずる人はいなかったので、仕事とプライベートの線引きが明確でドライな環境でしたね」

三枝さんが米国で勤めていたのは、日本の自動車メーカーの下請け企業でした。そのため、職場には日本人が出張に来ることもあり、その際には通訳やコミュニケーションの橋渡し役も担っていたそうです。

「例えば、日本からの出張者が米国職員に業務の話をしていても、米国職員は休憩時間になると迷わず話を切り上げ、サッと休憩に入ります。日本では珍しい行動かもしれませんが、米国では当たり前のことなので、このような場合には文化的な背景を説明し、コミュニケーションがスムーズにいくようサポートしていました」

日本で働くために30歳で帰国 不採用続きマイナス思考に

米国で4年働き、社内コミュニケーションを滞りなく進められるレベルのビジネス英語を習得していた三枝さんですが、30歳のときに帰国を決意しました。

「留学を含めると10年ほど米国で生活し、高校生の頃に私がかなえたいと思っていた夢――米国に留学して現地で就職することや、米国内の各地を旅することなどはすべて達成できたので、今度は日本で働いてみようと思ったんです」

しかし、帰国後の就職活動は、思うようにいかなかったといいます。

「帰国後に、大手転職サイトやハローワークを利用して企業への応募を始めましたが、書類の段階で落とされることがほとんどでした。面接に進んだとしても、30歳まで日本での就業経験がないことがネックとなり、断られることが多かったんです。

不採用が続くと、自分の経歴の中で何をアピールすればいいのか分からなくなり、『私のことを雇ってくれる会社なんてどこにもない』と思うようになりました。自分と似た経歴の人も周りにいなかったので、誰かに相談することもできず、どんどんマイナス思考になっていきましたね」

孤独で先の見えない転職活動に陥った三枝さんは、50社ほど応募した末に、ようやく食品や酒類の輸入販売をする小規模な貿易会社から内定をもらいます。しかし、当時は年収や労働環境など、条件面を検討する余裕もなくなっていたといいます。

「自信をなくし、『働かせてくれる会社だったらどこでもいい』という心境でした。振り返って考えてみると、不採用が続いたのは経歴そのものがダメだったわけではなく、職務経歴書でも面接でも、相手がどういう人材を求めているのかを考えていなかったことが原因だと思います。書類でも面接でも、インターネットで見つけてきたテンプレートのような答えしか用意していなかったんです」

苦戦した転職活動の末に入社した貿易会社では、海外の仕入れ先との価格交渉や在庫管理、発注、納期管理などの貿易事務と、社長のアシスタントとして、商談の通訳や資料の翻訳、海外顧客のアテンドなども行っていたといいます。

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38歳で転職決意するも「紹介できる案件がない」と言わ