岸田新総裁に望む 子育て予算「他の先進国並みに」

岸田文雄氏が自民党総裁に就任した。9月に行われた総裁選は初めて女性が複数立候補し、公開討論会では子育て支援や新型コロナウイルス禍の女性の孤立などもテーマとなった。選択的夫婦別姓も候補者の考えが問われた。これらの課題に対する岸田氏の政策について、識者は具体性や世論を見据えた行動を求める。

孤立を連帯につなぐ仕組み期待 恵泉女学園大学学長・大日向雅美氏

新型コロナウイルス禍は女性に大きな精神的、経済的負担を及ぼした。2020年度、非正規の女性雇用者は19年度比で男性の2倍以上減った。20年の自殺者数は男性が0・2%減だったのに対し、女性は15・4%増と深刻だ。

「コロナ禍が新たに生み出した問題は実は少なくて、もともと水面下にあった問題が見えるようになったのだと考えている。子育ての負担が共働きか、専業主婦かにかかわらず女性に偏る問題が根底にある。20年春の一斉休校、登園自粛やテレワーク推進などを通じて家庭に閉じこもり、孤立を深めた女性は多い。シングルマザーの苦しさなども可視化された」

岸田氏は公開討論会でコロナ下の女性の孤立について「さまざまな経済的な支援や連携を図れる仕組みを用意する」と話した。政策には「非正規や女性などコロナでお困りの皆様への給付金を支給」と盛り込んだ。
恵泉女学園大学学長・大日向雅美氏

「経済的支援はもちろん大切。連携の仕組みの具体策が必要だ。コロナ下で心強かったのは、地域のNPO法人や自助グループなどがマグマのように動いたことだ。私も東京で子育て支援施設の運営に携わっている。コロナ下でも感染対策を施しながら子どもの一時預かりなどを実施している。各地でオンラインなども活用して生身の支援を届け、孤立を連帯につなげるような取り組みが広がった」

「新総裁にはこうした地域の資源を生かした仕組みづくりを期待したい。子育ての大変さに気付いた男性もいるが、変わらず非協力的な男性が多いのも事実だ。男性の意識をいかに根本から変えるかも課題だ」

男女がそれぞれ2人立候補し、これまでにない総裁選となった。

「女性政策に対する姿勢など、タイプが全く違う高市早苗氏と野田聖子氏の主張を聞けたのは社会にとって大きな収穫だったのではないか。女性を『女』とひとくくりにするのではなく、『個』で見ることが大事だと気付かされたはずだ」

選択的夫婦別姓の議論 前進求める 早稲田大学教授・棚村政行氏 

岸田氏は3月に発足した党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人に名を連ねたが、今回の総裁選では「議論はすべきだ」としつつ、子どもの姓の扱いなどを理由に賛否を明らかにしなかった。
早稲田大学教授・棚村政行氏

「本来は賛成派だったと思うが、総裁選では立場を曖昧にした。選択的夫婦別姓が政策論争になったのは進歩だ。だが(岸田氏が自分の特技とする)『人の話をしっかりと聞く』結果として、党内の反対派や保守派に配慮するあまり、LGBT(性的少数者)理解増進法のように議論が先送りになるのは心配だ」

「今回、変化を期待した党員票は河野太郎氏に集まり、岸田氏は派閥の力で国会議員から支持を集めた。立場が強い議員が別姓に反対しても、議論を前に進められるか。岸田氏は党役員の任期などを示した党改革案を進めようとしている。自民党は変わったということを示すためにも、世論の声を聞いて選択的夫婦別姓の実現に動いてほしい」

次のページ
子育て促す空気づくりを みらい子育て全国ネットワー