変わりたい組織と、成長したいビジネスパーソンをガイドする

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック

日経 X woman

『早く絶版になってほしい #駄言辞典』(日経BP)。この本で参考文献として紹介した『女性差別はどう作られてきたか』(集英社)の著者、北海学園大学名誉教授で政治学者の中村敏子さんに、『#駄言辞典』の感想とメッセージを伺いました。

駄言と決め付けるだけでは、問題は解決しない

日経xwoman編集部(以下、――) 『#駄言辞典』を執筆・編集するに当たり、数々の書籍や資料を参考にする中で、中村敏子さんの著書『女性差別はどう作られてきたか』に出合いました。ウェブ上のフォーマットやツイッターを通して約1200の駄言を集めた後、どう論じていくか方針を探っているときで、さっと道が開けたように感じました。

中村敏子さん(以下、中村さん) 『#駄言辞典』はすべて読みました。第1章に書かれている「こんなことを言われた」という内容は、私の若かりしときと同じような言説が今でも語られているのだな、というのが率直な感想でした。本のキャッチコピーである「絶版を目指して出版する」という心意気には共感しますが、こうした言説を「駄言」と決め付けることはどうなのだろう、とも思います。

『#駄言辞典』で一番主要な問題だと考えられているものは「女らしさ」の押しつけですよね。「女らしさ」を押しつける言説を「駄言だ」と決め付けるのは、言われたことへの「お返し」のような感じで、同じやり方を取ってしまっているのではないか。それでは問題解決にはつながらないのではないか、という気がしたのです。

では、どうしたらいいか、ということについては、追ってお話しをしていきます。

「女らしさ」と「家制度」は、直接は関係ない

―― 明治政府は民法によって「家制度」を定めました。しかし、この家制度に基づく男尊女卑的な考え方は、第2次世界大戦後、日本国憲法で法の下の平等がうたわれてからなくなったはずなのに、日本の習慣や生活の中ではまだ息づいているように感じます。

中村さん 「女らしさ」の押しつけは「家制度」によるものではないかという見方が『#駄言辞典』には書かれていましたが、「女らしさ」と「家制度」は直接は関係ない、ということを私は指摘したいと思います。

「女らしさ」というのは、人間の行動を縛る考え方。つまり、考え方です。このように人間の行動を縛る考え方を「イデオロギー」といいます。「女らしさ」は、イデオロギーです。

翻って「家制度」は国家が作った制度。家族関係をどのように定めるか、国家が権利や義務をどう認めるかということに関係します。「女らしさ」と「家制度」をしっかり識別する必要があるのです。

逆に質問したいのですが、「家制度」が明治民法によって作られたということは、ご存じでしたか?

―― 実は『#駄言辞典』の編集を担当するまで知りませんでした。

中村さん そうなのですね。「家制度」は、明治31年(1898年)の明治民法によって定められた制度です。戦後の民法改正(1947年)によってなくなるまで続いていました。こうした歴史を認識することは、今の女性の問題を論じるための、基本中の基本です。これを知らないというのは「女性のことを考えたことがない」ということと同じこと。女性が毎日暮らしている中で感じる「理不尽さ」というのが、どこに起因しているものなのかということぐらいは、やはり考えないとまずいですよね。知らないのは、単に不勉強だと思います。

―― はい、耳が痛いです。

日本国憲法の第三章「国民の権利及び義務」において、すべての国民は法の下に平等であると明記されている

日本国憲法の第三章「国民の権利及び義務」において、すべての国民は法の下に平等であると明記されている

新着記事

Follow Us
日経転職版日経ビジネススクールOFFICE PASSexcedo日経TEST

会員登録をすると、編集者が厳選した記事やセミナー案内などをメルマガでお届けしますNIKKEIリスキリング会員登録最新情報をチェック