線刻画が指し示す?古代船の旅路の果て高井田横穴群(大阪府柏原市) 古きを歩けば(42)

2012/11/13

歴史博士

正装し、手に旗ざおを持った人物がゴンドラ状の船の上にたたずむ。傍らには見送るかのように、大きく両手を振る女性の姿。高井田横穴群(大阪府柏原市、6世紀~7世紀)の第3支群5号墳に描かれた人物群像は何を物語っているのだろうか。

第3支群5号墳の羨道、横穴奥から向かって右の側壁に刻まれたゴンドラ船に乗る人物像。当時の正装をまとい、旗ざおを手にしている(大阪府柏原市)

162基の横穴墓を確認

同横穴群は古代、奈良盆地と大阪湾を結ぶ交通路だった大和川のほとりの丘陵中腹にある。大正時代に発見され、これまでに計162基の横穴墓を確認。うち27基で線刻画が見つかっている。「渡来系氏族の墓」との見方や、九州の類例を元に「九州から来た石工集団の墓」とする説などがあるという。近畿で唯一、国史跡に指定された装飾古墳だ。

ゴンドラ船上には櫂や舵を手にした人物像も。左斜め下には大きく両腕を振る女性の姿が描いてある

遺跡は20年前に公園として整備され、横穴は入り口に鉄柵が設けてあり普段は立ち入れない。ただしゴンドラ船に乗る人物像が描かれた第3支群5号墳は3年前、ガラスをはめ込んだ扉を取り付けて内部照明や音声案内装置も設置。いつでも壁画をのぞきこめるようになった。

同墳を月1回、定期点検する同市教育委員会の嘱託で元文化財課長の北野重さんに同行させてもらった。ガラス扉の鍵を開けて壁面の状況を丁寧に確認する北野さんの後に続く。羨道の高さは1.4メートルほど。ひやりと湿った空気を感じつつ頭をかがめて中に入ると、羨道の両側壁に力強い線刻画があった。