ママ社員の声を吸い上げ パソナ「社長ランチ懇親会」
Wの未来 会社が変わる
■経営トップと直接意見交換
「下の子が学童保育に入れず、いま待機しています」
「仕事と育児は両立していますが、家事まで手が回りません」
東京都千代田区にあるパソナ本社の会議室にはこの日、育児中の女性社員約30人が集まり、昼食をとりながら順番に自己紹介していく。子供の年齢や育児に話が及ぶと参加者からは「ええ~」「大変ねえ」と共感の声があがる。仕事と育児の両立では、どのママ社員も同じような苦労を経験する。初対面でも育児に話題が及ぶとぐっと距離感が縮まる。
とはいえ、自己紹介が終わったところで佐藤スコット社長(43)が入ってくると、部屋の空気が少し堅くなった。
「ママの声を経営トップに聞いてもらい、制度などの改善につなげましょう」。ママ社員だけの営業部隊であるキャリアママチームを率いる矢野美紀子チーム長(38)の呼びかけを合図に、佐藤社長との意見交換が始まった。佐藤社長も「いろいろ課題があるだろうけど、どんどんアイデアや意見を出して」と促す。
■全社員の1割が育児中の女性社員
パソナでは全社員の約10%、約250人が育児中の女性社員で、その多くが急な顧客対応などに追われる営業職場で働く。昨年は約100人が育休を取得。ほとんどが職場に戻るというが、育児、家事、仕事の「3足のわらじ」を履きこなすのは容易なことではない。
「出社時間を朝8時に早められますか」とママ社員が勤務時間帯について質問。佐藤社長は「その場合、誰か管理職もいないといけないのでは」と応じる。別のママ社員が、直属の上司が育児に対してあまり理解がないことを訴えると、矢野チーム長が「上司に跳ね返されたら、私たちがついています」と力強く励ます。
「小学校放課後の習い事に付き添いたい。その日は帰宅時間を早めて、別の日に柔軟に振り向けられないか」と尋ねた社員に、佐藤社長が「顧客と仕事中にできるの?特に営業だとどうなの?」と逆質問、「顧客やスタッフに迷惑をかけるのは駄目」とくぎを刺す場面もあった。
「子供の病気などで遅刻したら査定に響くのか」「仕事がある時に半日休むのが心苦しい」「もっと早く出社して早く退社できる仕組みは」――。ママ社員からは次々と質問や意見が飛び出し、その1つ1つに佐藤社長らが応じる。
■「自分が会社の世話をしている」という態度で
懇親会の締めくくりで、佐藤社長は「忘れてほしくないのは、皆が頑張って会社を良くするという前提で、こうした仕組みを作っているということ」と念押し。「若い人たちにこの考えを浸透させていきたい。『自分が会社の世話をしている』という態度でやってほしい。そこを支援したい」と改めてママ社員にエールを送った。
懇親会の終了後、ママ社員の1人である水内桃江さん(38)は「これから子育てでどんな壁があり、どう乗り越えるのか、いろいろな話が聞けたので参考にしたい」と満足そう。佐藤社長も「たくさん意見は出たが、彼女らはすごく頑張っている。『会社で無駄な時間を過ごすな』ということを徹底したい」と話していた。
(山本優)
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