動画・街ブラ・高学歴…「テレビ発」ヒットのツボ
日経エンタテインメント!
【テレ朝動画】
ニッチな目利きで浸透する「面白動画ブランド」
テレビ局の動画配信といえば、過去の番組などのアーカイブものに頼りがち。そのなかでテレビ朝日の「テレ朝動画」は、配信オリジナルで立ち上げたコンテンツが他局に比べ断然多く、毎月数万人が有料視聴するももいろクローバーZのバラエティー『ももクロChan』や、DVDがセールスチャート上位を独占したバナナマンの旅番組『バナナTV』など、ヒットを生み出している。『ももクロChan』はこの4月から地上波でも放送が開始。他局には見られない動きだ。
このようにテレ朝動画がネットユーザーに受け入れられているのは、独特の選球眼が評価されているためと言っていいだろう。ももクロやバナナマンといった「大物」はごく一部で、オリジナルコンテンツの大半を占めるのは、LinQ、アップアップガールズ(仮)、でんぱ組.incといったファン以外にはなじみの薄いアイドルや芸人たち。コンテンツビジネス局の渕勇二氏が「"下克上"をキーワードに選んでいる」と説明するニッチなチョイスだ。しかしいずれも頭角を現しており、特にアイドルファンの間で「テレ朝動画」は信頼のブランドとして定着しつつある。ももクロも配信開始はブレイク前の10年だった。
派手なことより趣味を深く
そんな"目利き"たちが次に目をつけたのが「プロレス」と「釣り」。「ネットは分かりやすくいえば『趣味の世界』。だから派手なことをやってもお客さんはついてこない。プロレスはここ何年かで女性客が増え、客層の変化を感じるので、初心者にも取っつきやすいレスラーバラエティーを始めました。釣りは、テレ朝動画でおなじみのでんぱ組とLinQのメンバーに参加してもらい、新しい客層を呼び込めれば」(渕氏)。
テレ朝動画が目指しているのは、メディアとしてのブランド認知。特定のコンテンツが突出した人気を得る「点の面白さ」より、コンテンツ全体に一貫する「面の面白さ」だ。視聴率好調のテレビ朝日だが、配信分野でも他局を引き離し、真の王者になるのだろうか。
【街ブラ番組】
空前のお散歩ブーム、「近場の再発見」で小さな幸せ
テレビでは今、街をブラブラ歩く「お散歩番組」が空前のブームを迎えている。平日10時台でトップの視聴率になることも多い『若大将のゆうゆう散歩』(テレ朝)や、DVDがシリーズ累計93万枚売れている『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレ東系)のほかにも、2012年に始まったフジ系の『ぶらぶらサタデー』は反響の高さを受け、2013年4月に放送枠が60分から90分に拡大した。なかでも『有吉くんの正直さんぽ』は、周りにこびない有吉弘行の芸風が街でも人気を獲得、大好評を得ている。
視聴者にとっては、身近なものや場所の再発見ができるという点が魅力。電車やバスで行ける商店街のコロッケに「実はこんなこだわりが…」と言われれば、つい手が伸びる。出かけたところで、かかる費用は知れたもの。「安・近・短」の世界だ。
作る側にとっては、展開が予定調和にならない点がありがたい。「街の人とさまぁ~ずや女子アナとの思いがけない化学変化を楽しんでもらえている」(『モヤモヤさまぁ~ず2』小高亮プロデューサー)。
番組常連の商店街であっても、「訪れる日時や人によって情報が更新された映像が撮れる」とはある放送作家。加えて、制作費用が抑えられるというメリットも。遠隔地の旅を想像するより、近場のリアルを、ということか。
【海外ネタバラエティー】
身近になった海外の面白ネタがバラエティーに
国際色豊かなバラエティー番組が増加中。芸能人が体当たりロケを敢行する『世界の果てまでイッテQ!』が代表例だが、タイプの違う番組も4月から増えた。
海外に嫁いだ日本人女性に密着し、その暮らしぶりを見せるのが『世界の日本人妻は見た!』。『世界の村で発見! こんなところに日本人』も、異国に住む日本人に会いに行く番組だが、こちらはへき地にロケ先を絞っている。
旅番組色が濃いのが、4月から放送時間を拡大した『海外行くならこーでね~と!』。日本語が話せる現地コーディネーターが、ガイドブックには載っていないグルメ、遊び場などを紹介する。同様のコンセプトだが、『世界さまぁ~リゾート』はビーチ情報が中心。リポーターの日本語がかなりカタコトなのがバラエティーらしい。
海外ネタバラエティーの「変化球」としては、成田空港などで外国人にインタビューをする『Youは何しに日本へ?』がある。日本でのロケではあるが、アポなしゆえのハプニングの楽しさと、外国人の目を通した日本像が分かる点で発見が多い。
2012年になって新規にLCC(格安航空会社)3社が運航を開始するなど、海外はますます身近な存在になってきた。どの番組も、海外を憧れではなく身近な存在とし、踏み込んだ視点を持っている。
【高学歴タレント】
芸能界でも学歴が身を助く
クイズ番組を中心に、芸能界でも有名大学出身の知的さが好まれる傾向が強い。特に顕著なのがテレビ朝日の『Qさま!!』だ。
東京大学出身の三浦奈保子、京都大学出身の芸人、ロザン・宇治原史規、早稲田大学出身の村井美樹らが常連。これら高学歴タレントはクイズ番組を主戦場に活動していたが、最近は知的さを売りに情報番組へと活躍の場を広げている。芸ではなく、「学歴は身を助く」の現象が起きているのだ。
『Qさま!!』では、名前のテロップと一緒に出身大学を明記する点も特徴的。最近では、壇蜜が昭和女子大学出身であることをどこよりも先に公開していた。
【関西ジャニーズJr.】
活動急増は「ポスト関ジャニ」の予兆
次のCDデビュー組が待たれるジャニーズJr.のなかで、関西ジャニーズJr.の動きが慌ただしくなってきた。桐山照史(あきと)、重岡大毅といったメンバーを中心に、数組のユニットが存在し、地元関西ではすでに人気者の彼ら。それが2012年10月にBSフジでメーン番組『まいど!ジャーニィ~』が始まったほか、2013年3月には映画『関西ジャニーズJr.の京都太秦行進曲!』が公開。翌4月にはNHK BSプレミアムで放送するジャニーズの音楽番組『ザ少年倶楽部』でコーナーがスタートし、この春から初めての全国ツアーが始まった。7月期のフジ系連ドラにメンバーが出演するなど、全国区の活動が急増していることから、年内にもCDデビュー組が登場するのでは、と言われている。
持ち前の陽気なキャラクターと、しゃべりを武器に、ポスト関ジャニ∞が生まれる日も近そうだ。
(日経エンタテインメント! 木村尚恵・内藤悦子)
[日経エンタテインメント! 2013年7月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
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