ソーシャルゲーム最前線 2000億円市場の軌跡
日経エンタテインメント!
「Mobage(モバゲー)」を運営するDeNAのプロ野球球団買収や、人気タレントを起用したCMなどもあって、この1年ほどの間に、急速に認知度が高まったネット関連サービスが「ソーシャルゲーム」。
数百万人が登録するゲームが続々登場
ソーシャルゲームとはもともと、Facebookのようなパソコン向けSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で遊べる手軽なオンラインゲームの一種だった。日本では、グリーやDeNAといったSNS運営会社が自ら開発したモバイル向けのソーシャルゲームがヒット。『釣り★スタ』(グリー)、『怪盗ロワイヤル』(DeNA)、『ドラゴンコレクション』(KONAMI)といった、数百万人から1000万人超もの登録者を持つゲームも続々登場している。
最近では、毎日アクセスしたくなる仕組みや、有料課金を促す導線など、人間のモチベーションを高める様々な仕掛けを持つソーシャルゲームの特性を、ゲーム以外のビジネス分野などで活用しようという「ゲーミフィケーション」という概念も話題になっている。
ソーシャルゲームは、プラットフォームであるSNSの特性を生かし、不特定多数のユーザー同士が協力プレーや対戦などをすることで面白さが増すゲームだが、1人でも楽しめる。基本プレーは無料で、ゲーム中に使えるアイテムやゲームの拡張機能などがほしい場合は有料という"アイテム課金"を取り入れている。1回に遊べるプレー時間が短く設定されており、1日数回アクセスして遊ぶというのが一般的。コツコツ無料で遊び続けることもできるし、早くゲームを進めたい人は、時間短縮になるアイテム課金を利用するといった、それぞれのスタイルに合わせた遊び方ができる。
2007年はわずか4億円市場
オンラインゲームなので運営会社のサーバーにアクセスしながらプレーするが、携帯電話でストレスなく遊ぶための操作性の向上や、通信データがなるべく軽くなるような工夫もされている。短い時間でネットを見る感覚で遊べる敷居の低さもあって、忙しいビジネスマンなどゲームから離れていた20~40代にも受けてブレイクした。
国内では、2007年にグリーがリリースした『釣り★スタ』が最初の本格的なモバイル版ソーシャルゲーム。それまでは、無料ゲームでサイトにユーザーを呼び込み、その集客力をベースとした広告ビジネスが主流だったが、『釣り★スタ』のヒットでアイテム課金による現在のソーシャルゲームのビジネスモデルが確立した。
2009年にはDeNAが『怪盗ロワイヤル』をスタート。市場規模は、『釣り★スタ』が登場した2007年に4億円程度だったものが、わずか5年で2000億円規模にまで拡大した。ただし、アイテム課金などを利用する人は全体の一部で、10代などユーザーの多くは無料で遊んでいる。アイテム課金を利用する中心は30~40代だ。
市場の急成長は、DeNAやグリーが2009~2010年に自社のプラットフォームを他のゲーム開発会社にも開放する「オープン化」に転じたことが要因としてある。多くのネット企業や大手ゲームメーカーがソーシャルゲームに参入。そこからバンダイナムコゲームスの『ガンダムロワイヤル』やKONAMIの『ドラゴンコレクション』といったヒット作が登場した。
特に『ドラゴンコレクション』は、同社が『遊戯王』カードなどで培ったカードコレクションのノウハウを生かして大ヒット。登録者数は500万人を突破した。これを受けて、現在、多くのソーシャルゲームがカードを集める仕組みを取り入れている。
カードバトルで大ブレイク
実はソーシャルゲームの場合、コンシューマーゲームとは違って、リリースしてから、ユーザーの遊び方を日々チェックしながらバージョンアップしていく。例えば、GREEの『探検ドリランド』は、従来あったゲームにカードコレクションの要素を加えて人気向上につなげた。
こうした一方で、現在急増しているのが人気コンテンツとのコラボレーションだ。最近ではプロ野球をテーマにした『プロ野球ドリームナイン』(KONAMI)や『大熱狂!!プロ野球カード』(gloops)、マンガの世界観を基にした『クローズ×WORST~最強伝説~』(ハドソン)などが人気を集めている。さらに『仮面ライダーレジェンド』(バンダイナムコゲームス)、『けいおん!ミラクルセッション』(バタフライ/TBSテレビ)なども続々とリリースされている。
なかでもDeNAは、『ガンダムロワイヤル』のヒットを受けて、2011年10月にバンダイナムコゲームスとの共同出資会社「BDNA」を設立。ヒットコンテンツを生かしたソーシャルゲーム開発を強化している。ほかにも『バイオハザード』や『ファイナルファンタジー』など人気ゲームシリーズがソーシャルゲームに参入。アニメや人気シリーズは、バトル要素やカードコレクションとも相性がよく、ソーシャルゲームに落とし込みやすい。人気コンテンツとソーシャルゲームの融合は、今後ますます増えていきそうだ。
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(ライター 久村竜二)
[日経エンタテインメント!2012年2月号の記事を基に再構成]
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