日本出身の神様はただ1人 七福神のミステリー

幸福をもたらしてくれる神さまを1神ずつ参拝して回る「七福神めぐり」。恵比寿(えびす)、大黒天、毘沙門天(びしゃもんてん)、福禄寿、寿老人、布袋(ほてい)、弁財天の7体は日本の正月に欠かせない存在だ。中世の民間信仰から広まったものだが、この中で日本出身は恵比寿さまただ1人。あとは海外から招来した神さまたちだ。

夷、戎、蛭子、恵比寿…みな「えびす」

恵比寿は「夷」「戎」「蛭子」などの漢字でも表記される。蛭子(ひるこ)は「古事記」「日本書紀」に出てくる国造りの神「イザナギノミコト」と「イザナミノミコト」の子供とされる。しかし3歳になっても自分で立つことができなかったため葦(あし)の船に乗せて海に流されたという。七福神にしては気の毒な前半生だが、その後漁民に大漁をもたらす「エビス」として戻ってきたとされる。キーワードは「海」だった。

漁民たちには時折浜に打ち上げられる鯨やサメなどを神さまからの授かり物として受け止める習わしが古くからあったという。皆で分け合い一時の「福」を得る。流された蛭子が海人たちに漁業や交易、交通などの神、恵比寿さまとして敬われる素地は古くからあった。かつて海は陸上よりも発達した交通路だった。恵比寿さまを祭る神社は瀬戸内海や日本海の海岸線などに散在する。遠方から福を運んできてくれる寄神、客神(まろうどがみ)と信仰を集めてきたようだ。

七福神は日本、中国、インドの神々の連合体だ(2013年1月、東京・渋谷の西武百貨店)

大黒天はインドの「マハーカーラ」と日本の大国主命が習合した。マハーカーラは「偉大な黒」を意味し、ヒンズー教で暗黒をつかさどる神さまだった。日本に持ち込んだのは最澄という。同時に財運をもたらす神として信仰され、日本では財神として渡ってきた。大国主神は古事記の国譲りのエピソードで知られる重要な神さまで、「だいこく」ともに読めたことから合体したという説が有力だ。

毘沙門天も元来はインドの財宝神「クベーラ」だったという。この神さまが中国を経由する時は仏教を守護する四天王に変わる。日本でも戦国時代の上杉謙信が信仰していたことで知られている。だから七福神を乗せて航海する「宝船」では唯一甲冑(かっちゅう)をまとっている。日本では改めてクベーラの性格が重視された。唯一の女神、弁財天もインド由来。ヒンズー教で水と豊穣(ほうじょう)の神さま「サラスバティー」だ。音楽もつかさどるほか悪神を退治する戦いの神さまでもある。

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