夫が知っておくべき妻の「更年期」
日経ヘルス・フォーメン
~不機嫌、怠け……それともうつ病? こんな変化が起こっていませんか~
・ ボーッとすることが多い
・ 感情の起伏が激しい
・ 集中力や記憶力の低下
・ 「うつ」のような状態になる
・ 自分に対する極度の不安や心配
・ 今までやっていたスポーツがつらい、疲れる
・ 食欲が落ちる
・ 性欲がなくなる
【具体的な症状】
・ 全身のだるさ
・ 疲労感
・ めまい
・ ホットフラッシュ(ほてり、のぼせ)
・ 関節痛(四十肩、腰痛、ひざの痛みなど)
・ 肩こり
・ 腹部の膨満感
・ 食欲にムラがある
・ 便秘や頻繁に起こる下痢
・ 肌のシミ、シワ、たるみ
・ 骨が弱くなる。骨粗しょう症
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これらの症状がひどくて生活に支障が出る。それが「更年期障害」
「更年期」とは、生理がなくなる50歳前後のおよそ5年ずつの10年間を差す年間を指す。「ただ、40歳前後から症状が出る人、50歳を過ぎても症状を感じにくい人もいます」と東峯婦人クリニック院長の松峯寿美さんは、更年期の症状や期間は個人差が大きいことを指摘する。
この時期、女性の体はどう変化するのか。簡単にいえば卵巣の機能が滞り、やがて止まる。「女性ホルモンが減少し、閉経する」のだ。生きている間ずっと精巣の機能が持続する男性とは異なる女性特有の変化である。
誰でも症状は出る 夫の「気付き」と「理解」で妻は安心できる
この女性ホルモンの減少が、40代以降の女性にさまざまな不調を引き起こす。女性としての生殖機能が役割を終えるだけでなく、性欲、脳や内臓、骨、皮膚にも影響を与える。具体的な症状は前ページに挙げた通りだ。
「更年期の女性なら、誰でも何かしら症状が出るもの。我慢できる程度を超えて、生活に支障が出るなら、更年期障害という病気なので、早めに治療を」(松峯さん)。
更年期障害の症状は、夫から見ると不可解で、怠けているように見えるかもしれない。だが、大事なのは「加齢に伴う避けられない女性の体の変化」ととらえ、特有な言動を理解し、気持ちに寄り添うこと。
「更年期障害にはホルモン療法や漢方薬、対症療法のほか、カウンセリングが有効。夫も妻の話を聞くことならできるはずです」(松峯さん)。
また、この時期にすれ違いが起こりやすいのがセックス。「女性ホルモンが減少すると、膣粘膜が薄くなり、性交痛が起こることも。セックスを苦痛に感じる女性が増えますが、夫にはいえず耐えている人も多い。スローセックスで、挿入しなくても満足できるような工夫を。夫婦の新しいステージに入ったと考える時期です」(松峯さん)。
~更年期障害の主な治療法~
分泌量が減った女性ホルモン「エストロゲン」などを補う治療で、更年期障害の代表的な治療法。即効性に優れているので、「すぐに症状を抑えたい」人にお薦め。ホットフラッシュや全身のだるさのほか、膣の乾燥などの改善もある。性交痛の緩和にも使われる。注射、のみ薬、貼り薬、ゼリー剤など薬の選択肢も多く、目的や効果を考えて選べるようになっている。
2 漢方療法や対症療法
ホルモン療法に抵抗がある場合の治療法。漢方薬なら「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」や「加味逍遥散(かみしょうようさん)」などは、昔から更年期障害に効能があるとされる。ホルモン療法と併用することも多い。対症療法としては、憂うつ感やイライラがひどい場合には精神安定剤、動悸やホットフラッシュに対しては自律神経調整剤などが処方される。
3 カウンセリング
妻が更年期障害の体や心の不調を訴えたら、話をきちんと聞き、つらい気持ちを察した言葉がけをすることで、症状がずいぶん軽くなることが多い。「自分を理解してくれている」と感じることが心の安定になる。もちろん感情の起伏が激しく、うつの状態がひどいなど、精神的な症状が強いときは、更年期外来のある産婦人科やカウンセラー、心療内科を受診する。
~更年期の妻に、夫ができること~
体の変化やつらさを理解しいたわりの言葉を
体の症状がひどくて、例えば家事ができなくても「ちゃんとやれよ」ではなく、「無理しないでいいよ」「それはオレがやっておくよ」などと理解、協力する言葉がけが大切。「オレだって疲れているんだから」は禁句。
心の不安やつらい気持ちに寄り添う
45~55歳は、子どもの教育、仕事や周囲との人間関係、親の介護などストレスが重なる時期。妻の話に「それはつらいなあ」と共感したり、「大丈夫。心配するな」と励ましたりするなど、気持ちに寄り添う姿勢を見せて。
一緒に気分転換したり、趣味を持つことを薦める
散歩やジョギング、軽いスポーツを一緒にすれば、お互いに体力維持になるし気分もリフレッシュされる。一緒にやるのが照れくさいなら、妻が趣味を見つけ、楽しむことを応援するだけでもいい。夫の理解を感じられるはずだ。
セックスの無理強いは禁物
一般に更年期は性欲が低下する人が多い。セックスを拒否されても妻は自分を嫌いになったわけではなく、むしろ、夫に対して申し訳ない気分になっていることが多いもの。そんな気持ちを理解することが大切。
年齢相応のセックスを考える
性交痛がつらいことも、セックスを遠ざける一因。潤滑ゼリーを使うのも改善策の一つだが、挿入にこだわらずにお互いの気持ちと体が満足できるよう、スキンシップや会話などで工夫して、気持ちのいい時間を作ろう。
(ライター 船木麻里)
[日経ヘルス・フォーメン2012年春号の記事を基に再構成]
健康や暮らしに役立つノウハウなどをまとめています。
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