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アマゾン電子書籍、ヒットの「原石」発掘 広がるセルフ出版 ジャーナリスト 新 清士

2013/4/27

昨年11月、米アマゾンの電子書籍リーダー端末「キンドル」が日本で発売され、国内の電子書籍市場がようやく本格的に立ち上がりつつある。端末発売に合わせ、将来的に出版業界に大きな変化をもたらしそうなサービス「キンドル・ダイレクト・パブリッシング(KDP)」も始まった。これはインターネットを通じて自分の電子書籍をユーザーに直接販売する「セルフパブリッシング(セルフ出版)」ができる仕組みだ。

■10万部のヒット作、電子書籍では1000部がせいぜい

電子書籍端末「キンドルペーパーホワイト」。筆者の小説を表示している

筆者は今年2月に趣味で書いていた小説を1冊、実験的にKDPを使って登録販売してみた。その体験を通じ、電子書籍の潜在的な可能性に驚かされた。今の状況は、2008年に米アップルがスマートフォン(スマホ)「iPhone」向けコンテンツ配信サービス「App Store(アップストア)」を開始したときの状況に似ていると感じた。

キンドル向けの日本語の電子書籍は現在、大手出版社の一部ベストセラーや、文庫本化されている書籍の電子化が中心で、市場規模はまだまだ小さい。ある大手出版社の編集者によると、紙の書籍で10万部売れたヒット書籍が、キンドル版では1000部に達するのがせいぜいという状況のようだ。人気のある書籍でも電子化すると数百部程度しか売れないのが現状で、ベストセラーの登場ははるか遠いといえる。

アマゾンの「キンドルストア」ページ

ただし、今の状況がこのまま続くとは考えにくい。筆者はかなりの読書家だと思うが、キンドルに一度慣れてしまうと、もう紙の書籍に戻りたいと思わない。大量の書籍の置き場所確保に長年苦労してきたが、電子書籍ではそうした問題から完全に解放される。しかもキンドルは軽い。今後、同じ書籍でキンドル版が発売された場合、紙を選ぶことはないだろう。

電子書籍はまだニッチな市場だが、KDPは近い将来、出版業界に劇的な変化を引き起こす可能性があると予想できる。これまで書籍を出版できる可能性のなかった作家が、KDPを使って数多く参入してくるとみられるからだ。自分が書いた小説やマンガを多くの人に読んでほしいというニーズは作家側に確実に存在する。しかし、これまではそれを実現する方法がなかった。セルフ出版なら可能だ。

セルフ出版はキンドルが普及するうえで大きな魅力の一つとなるだろう。一般の作家が書籍を出版する場合、従来は出版社を通す以外に方法がなかった。そのため各種の出版社が主催する新人賞などを受賞したり、企画を持ち込んだりして認められる必要があった。

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