ほうれい線、たるみ…原因は体の「糖化」

白米、白いパンといった精白された炭水化物食品をよく食べ、ジュースや焼き菓子が好きという人は要注意。たるみが進む危険性があります。
たるみの原因の一つに"糖化"という現象があることが分かってきました。これは、糖がたんぱく質と結合すること。食品の調理や製造過程でもできますが、体内では、急速に血糖値が上がって処理しきれない糖が生じると、組織をつくるたんぱく質に糖が結合して起こります。
こうしてできるのが糖化最終生成物(AGEs)。冒頭の食品群は、血糖値を上げやすかったり、AGEsが多いと考えられるものです。
次の項目で当てはまるものが多いほど、体の中で糖化が進んでいる可能性が大。
□ 砂糖入りの清涼飲料やスイーツ、お菓子などの甘いもの、白米・白いパンといった炭水化物食品が好き
□ 野菜や海藻など食物繊維が多い食品をあまり食べない
□ 運動をほとんどしない
□ お風呂はシャワーですますことが多い
□ しっかりUVケアをしていない
□ 糖尿病、もしくは糖尿病予備軍と言われている

「AGEsは肌のハリのもとであるコラーゲン同士を結合させ、弾力性を低下させます。これがたるみの一因。さらに、コラーゲンとエラスチンの代謝も遅らせます」と、慶應義塾大学医学部教授の井上浩義さん。たるみやシワだけでなく、老いた印象を強める黄ぐすみに対する影響も指摘されています。
さらに、一部は病気の原因にも。皮膚のたるみ同様に、コラーゲン線維の糖化で起こる骨粗しょう症だけでなく、「糖尿病や動脈硬化など生活習慣病との関係が明らかになっています。特に、網膜症や腎症など糖尿病合併症の第一原因はAGEsと考えられます」と、AGE牧田クリニック(東京都中央区)院長の牧田善二さん。


AGEsが増えるルートは、食事で取り込む場合と、甘いもののとりすぎなどで体内でつくられる場合の2つ。「食事に含まれて入ってくるAGEsが55~60%といわれています」と井上さん。
AGEsは糖分とたんぱく質を高温加熱してつくられる食品に多く含まれるとされます。代表例がクッキーなどの焼き菓子やフランクフルトのような加熱した肉加工品など。
「体に害を及ぼすAGEsは、体内に一度蓄積したら排泄されにくいのが大きな問題です。特に皮膚のコラーゲン線維のように半分入れ替わるのに約15年もかかる組織だと、長期間とどまり続ける可能性があるんです。40歳を超えると年齢に比例してAGEsが増えるという研究もあるので注意して」と牧田さん。糖尿病の人では糖化が進みやすいことが分かっていますが「たるみやシワも糖化の指標」とのこと。
では、どうしたら糖化を防げるのでしょうか?
AGEsを多く含む食品に気をつけるほかに「食後すぐ10分ほど歩くだけでも糖が使われ、食後の血糖値は上がりにくくなります」(牧田さん)。血糖値を上げにくい食事をすることも大切です。
この人たちに聞きました
AGE牧田クリニック院長。北海道大学医学部卒。日本糖尿病学会認定医専門医。2003年にクリニックを開設。著書に『糖尿病専門医にまかせなさい』(文藝春秋社)など。
井上浩義さん
慶應義塾大学医学部化学教室教授。九州大学大学院理学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員。生活習慣病の予防と治療を目的とした医薬品や機能性食品の開発を行う。
(ライター SCRIVA東海左由留・川崎美津子、構成 日経ヘルス編集部)
[日経ヘルス別冊『ほうれい線は消せる!』の記事を基に再構成]
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