ヒットの新定番 ブームを生むカギは「3つのR」
長きにわたる日本経済の低迷や、東日本大震災の影響を受けて、エンタ界も停滞期が続いていた。しかし震災から2年がたち、政権が変わって「アベノミクス」の効果が期待される中で、時代の気分は変わろうとしている。
エンタ界においても、ヒットの新定番といえる人気作や現象が生まれ始めている。日経エンタテインメント!誌では2013年7月号で「ヒットの新定番100」を紹介した。その新定番を見ていくと、ジャンルを超越して共通する傾向が浮かび上がる。それが「3つのR」だ。
リアリティー(Reality:仮想世界から現実へ)
第1のRはリアリティー。つまり仮想世界から現実世界やライブへという動きだ。
仮想世界を象徴するゲーム業界において、その世界観を実際に楽しめる「ゲームバー」や「ゲームカフェ」が登場し、アニメを語り合う街コン「エヴァコン」も大盛況。音楽業界はCDからライブの時代へと進んでおり、覆面アーティストまでが「本人不在ライブ」という奇妙な手段でツアーを敢行するようになっている。
テレビではスタジオを飛び出した「街ブラ番組」や「海外ネタバラエティー」が急増中。ブログのなかで「すっぴん公開」する女性タレントさえ、バーチャルの中でリアリティーを強調する試みのように見えてくる。
リバース(Reverse:逆転の発想)
第2のRはリバース。従来とは逆の発想から新たな企画やキャラクターが生み出されている。テレビドラマでは旧来の男女の関係が逆転したかのように、女優が「強すぎヒロイン」を演じ、男優は「ヌードラマ」で裸体を披露して視聴率アップに貢献している。タレントもおバカより「高学歴」が売り、ご当地キャラクターは「非公認」が人気、そして太めだけどかわいい「ぽっちゃり女子」…。
福岡発の「めんたいアイドル」に代表される地方アイドルの活躍も、中央発信から地方発へという逆転の発想の延長にありそうだ。
リバイバル(Revival:温故知新)
新しいメディアによって、過去の名作や人気キャラクターなどが復活するのも最近の傾向といえる。第3のR、リバイバルだ。
80年代海外ドラマの「なつかしヒーロー」が動画配信の人気コンテンツとなり、「将棋ネット中継」を200万人が視聴して盛り上がり、カードゲーム会社のテコ入れで「プロレス人気再燃」となったりする。この夏以降、「戦争・終戦テーマ」映画の公開が続くのも、温故知新の流れ。戦争から復興した過去を見つめ直すことで、震災後の新しい時代を考えようとする時代の機運とリンクしている。
いずれにしても従来の枠組みが大きく変わり始めているのは確か。3つのRによって今後も新しいヒットの定番が生まれていくだろう。
(日経エンタテインメント! 高宮哲)
[日経エンタテインメント! 2013年7月号の記事を基に再構成]
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