出生率に目標値、「産めよ殖やせよ」再び?(Wの質問)
日本経済新聞社は「電子版(Web刊)」の有料・無料読者の皆さんを対象とした意識調査「Wの質問」を随時実施しています。
今回は少子高齢化対策として、政府が生まれる子どもの数値目標を設けるかが議論されていることについて、皆さんのご意見をうかがいます。
少子高齢化に歯止めを掛けるため、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの数)に目標値を設けようとする意見が高まっています。政府の有識者委員会「選択する未来」が5月13日、50年後に1億人の人口を維持する必要があるとする中間報告書をまとめました。人口維持には合計特殊出生率を2.07人にしなければならず、これが目標値の目安となります。ただ2012年の合計特殊出生率は1.41人にとどまります。日本の合計特殊出生率は戦後一貫して低下傾向にあり、1973年(2.14人)以降、約40年も2.07人を下回り続けています。
少子化は今に始まった問題ではありません。それでもこれまで目標値を定めなかったのは、子どもを産む産まないは個人の選択であり、国が介入すべき問題ではないと考えられてきたからです。戦前から戦中にかけて国力増強のために「産めよ殖やせよ」が国を挙げて推奨された時期があり、当時への反省もありました。ただ現状のまま少子高齢化が進むと、50年後には人口の約4割が65歳以上という超高齢社会となり、労働力人口の減少や経済成長の鈍化、地域社会の縮小など厳しい将来が待ち受けています。そこで従来の方針を見直す機運が高まってきました。
国立社会保障・人口問題研究所の第14回出生動向基本調査(2010年夫婦調査)によると、既婚女性が理想とする子ども数は2.42人。一方、現実は1.71人で開きがあります。理想の子どもを持たない理由(複数回答)は「子育てや教育にお金がかかりすぎる」(60.4%)、「高年齢で生むのはいやだから」(35.1%)、「ほしいけれどできない」(19.3%)が上位に並びます。目標値を定めれば政府に達成義務も生じるので、産みたくても産めない状況を改善する手立てを行政に促せるメリットがあります。
一方、従来の指摘通り、目標値の設定は個人の選択を縛るリスクもあります。例えば結婚するか否かの選択です。少子化の原因に未婚者の増加があります。10年時点の生涯未婚率は男性20.1%、女性10.6%に上ります。約40年前の1975年は男性2.1%、女性4.3%と比べると、その増加は著しく、今後もさらに高まると推計されています。未婚者が増える一因は、成人したら結婚して家庭を持つという社会規範が変化し、個人の意思で選べるようになったことだといわれています。日本では出生率回復に結婚の増加が不可欠。目標値を定めた場合、独身者に必要以上のプレッシャーがかかる恐れも否めません。
今回は5月28日(水)までを調査期間とし、31日(土)の日本経済新聞朝刊の女性面と電子版で結果を掲載します。アンケートには日経電子版のパソコン画面からログインして回答してください。ログインすると回答画面があらわれます。電子版の携帯向けサービスからは回答いただけません。
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