また、もともと英語のタイトルが付いていても、その国の人たちに響くタイトルではない場合も変更される。伊坂幸太郎の『ゴールデンスランバー』は英語だが、スリラー小説として売り込むにはタイトルの表現が優しすぎるという理由から、迫力がありストーリーにも合った『REMOTE CONTROL(遠隔操作)』というタイトルに。このような分かりやすさとインパクトを追求したハリウッド的なタイトル付けが、外国で本を売るためには必要なようだ。

そのほか、谷崎潤一郎の『細雪』が『THE MAKIOKA SISTERS』となるなど、登場人物の名をタイトルにしたものや、原題をそのまま訳したタイトルに、少し説明を加えたパターンも見られる。

ちなみにタイトルが変更される場合は、日本の作品を翻訳したいと申し出た海外の出版社がまず、タイトルについて検討する。欧米でウケるように考えられたタイトルを提案し、日本の出版社の編集担当者と著者が確認する、という流れが一般的だ。最終的な判断は著作権を持つ著者の承諾で決まる。あるいは、著者と海外の出版社が直接契約を結ぶこともある。

嶽本野ばら著。小説より先に映画が海外へ。カンヌ国際映画祭に出品するため、日本を前面に出したタイトルに。
宮部みゆき著。仏教的な意味で『火車』を採用したため、直訳が難しい。そこで、ストーリーを基にしたタイトルが付けられた。
伊坂幸太郎著。「人を陰から操ること」の意に、作品に登場する「ラジコン」を重ね、内容に合ったうまいタイトルだ。

筒井康隆著。米国でウケる面白味のあるタイトルにするため、「家政婦は見た」ならぬ「メイドは見た」に変更!?
夏目漱石著。ストレートな直訳を採用。日本語の“我輩”というニュアンスは、英語で表現するのは難しいらしい…。
宮部みゆき著。日本のように「R.P.G.」という英語が欧米ではなじみがなく「疑似家族」を意味するタイトルに。

文化そのものが翻訳される

タイトルだけでなく、装丁の違いからも日本とその翻訳本を売る国の文化の違いがよく分かる。翻訳本は原本の装丁を流用することもあるが、基本的に著者の承諾を得て、オリジナルを新たに作るほうが主流。日本では本の内容をほうふつとさせるイラストを使った装丁が多いが、欧米版ではタイトルが大きく書かれたデザインのものがよく見られる。