アニメ作品では珍しくファッション分野への展開にも意欲的なのは、潜在的なファンを発掘する狙いがある。独自ブランド「RADIO EVA」やユニクロのほか、モバコレやタレントの中川翔子が手がけるマミタス、BEAMSといったアパレルとのコラボが話題となり、メンズに加え、レディース展開も広がっている。

「アニメグッズを購入するという行為が、作品への好意を再確認するという一つのエンターテインメントだと考えている。それを身につけることでさらに、ファン同士のコミュニケーションを生む。ただ、明らかにエヴァだと分かる物には抵抗がある人もいるため、『普通にファッションとしてかっこいい』ことを意識している」(神村氏)

また、普段はアニメを見ない50代や60代に作品の認知度が高まったのはパチンコ・スロット展開だろう。「2005~2006年にかけてDVDやグッズの売り上げが跳ね上がったと聞いている」(神村氏)。これまで「エヴァ」に触れなかったような年齢層にも知名度が広がったことで、一般的に「人気作」と認識される大きなきっかけとなった。

「エヴァ」が地方を変えていく

企業タイアップのほかに力を入れているのが、箱根町との取り組みだ。作中の舞台となる「第3新東京市」が箱根周辺にあたり、2009年にプロジェクトをスタート。「箱根補完マップ」が配布されるや3日間で4000人を動員した。翌年にはローソンが、エヴァがテーマの「第3新東京市支店」をオープン。2日目には通常の7倍にあたる3500人が押し寄せた。「箱根を訪れる年間2000万人の観光客のうち、10代や20代の新規の顧客を開拓する、非常にパワーのあるコンテンツだと捉えている」(箱根町観光協会高橋始専務理事)。

エヴァンゲリオンの舞台である「第3新東京市」が箱根周辺にあたることから、エヴァは2009年から箱根町とコラボレーションを行ってきた。

また、「想像以上の反響」(神村氏)と関係者を驚かせたのが、2012年春から継続中の地方都市での展示イベント。原画やレプリカを展示する「エヴァンゲリオン展」を宮城県「石ノ森章太郎ふるさと記念館」と宮崎県「みやざきアートセンター」で開催し、宮崎県では37日間で2万人を動員。また、岡山県「備前長船刀剣博物館」で開催された「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」は、107日間で想定の2倍以上となる5万人が押し寄せた。都市部のアニメイベントは飽和状態のため、「イベント慣れ」していない地方での展開はファン拡大のカギを握っている。

海を越えた展開も見据える。「新劇場版」2作は海外配給も行われており、「2013年には20万人以上が集うフランスの『JAPAN EXPO』でエヴァを特集する方向で進行中」(神村氏)。

多角的に広がる、エヴァの世界観に浸れる数多の仕掛け。だからこそ作品の空白期間があってもファンをつかめるのだろう。

(ライター 小野田弥恵・小川たまか・林健太)

[日経エンタテインメント! 2012年12月号の記事を基に再構成]