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報道カメラマンのiPhone撮影塾

2013/2/5

報道カメラマンのiPhone撮影塾

内蔵カメラが光量を検知、シャッター速度は自動で固定に

スコープ付きiPhoneでの撮影には一脚が欠かせない

スコープ付きiPhoneで次に挑んだのは、フィギュアスケートジャパンオープンの試合の撮影。だが結果は失敗。ブレてぼけた人影しか撮れなかった。暗くてピントが合わせにくい上、シャッター速度が遅く、ブレてしまった。写真がブレないために必要なシャッター速度は「1/焦点距離」が目安。例えば焦点距離が1000ミリ相当のスコープを装着した場合、1000分の1秒前後でシャッターを切らなければブレてしまう。

iPhoneの標準カメラアプリにはシャッター速度を変える機能がないため、フィギュア会場となる体育館内の光量の暗さを内蔵カメラが検知し、自動的に低速シャッター(約30分の1秒)に固定してしまっていた。「iPhoneでの望遠撮影には十分な光量が必要」が教訓となった。

iPhoneカメラで撮影した、サッカーの選手たちがボールを競り合う様子(12年11月)

そこで今度は双眼鏡付きiPhoneとスコープ付きiPhoneで、カメラマン2人がJリーグの日中の屋外ゲームを取材した。スコープを使った撮影はブレやすいため一脚を使用。当日は快晴で、かなり高速でシャッターを切ることができ、選手たちがボールを競り合う迫力のシーンが撮れた。

残る課題はピントだ。最近のデジタル一眼レフはすべてオートフォーカスだが、双眼鏡やスコープのピント合わせは基本的に手動。カメラマン2人も手動でピントリングを調節することに不慣れで、ピントを合わせたときには肝心なボールが行方不明、という事態が多発した。

置きピン・流し撮り…「伝統的技法」が威力発揮

iPhoneカメラは、画面内のシャッターボタンから「指が離れた時」にシャッターがおりる

そこで威力を発揮したのが、伝統的な撮影技術の一つ「置きピン」。実際の取材では、2010年のバンクーバー五輪で、モーグル競技のジャンプ台からふわりと姿を現す上村愛子選手を撮るときにも使った。コツは、数秒後の相手の動きと場所を的確に予測すること。今回の撮影ではボールの行く先を予想し、その場所に大体のピントを合わせておき被写体がくるのを待ち構えた。ただiPhone内蔵カメラは、シャッターボタンが表示された画面から指を離した瞬間にシャッターが切れる特徴がある。タイミング合わせには慣れも必要だ。

「連写撮影」できる特殊なアプリもあるが、一枚一枚の写真の画素数が極端に落ちるため、実用性は低い。結局、ボタン1回につき1枚ずつ撮影するiPhone付属の標準カメラアプリで、瞬間のシャッターチャンスを狙った。

フィギュアスケートジャパンオープンでスコープを使って撮影するも失敗(12年10月)
2度目のフィギュア撮影でとらえた、エキシビションで演技する浅田真央選手(12年11月)

失敗したフィギュアの撮影にも再挑戦。今度は一脚が不要で機動性も高い双眼鏡付きiPhoneを使い、置きピンと「流し撮り」を駆使した。動く被写体を追いながらとらえる流し撮りは、新人時代に、有馬記念で疾走するサラブレッドの撮影で初めて経験。被写体の動きの速さを読むのがポイントで、今回もNHK杯のエキシビションで演技する浅田真央選手の姿をしっかりととらえることができた。最新鋭デジタル機器のiPhoneだが、こうした伝統的技術も併せることで、よりいい写真を撮影できるというわけだ。

(写真部 小林健・寺沢将幸)

米アップルのスマホ「iPhone5」のカメラ機能は8メガピクセル。この画素数は2004年のアテネ五輪で世界中のプロカメラマンが使用した当時の最新型一眼レフとほぼ同じ。ならば報道カメラマンの経験と技術でiPhoneは取材現場でも使えるのでは――。そんな発想で始めた企画「iPhone×Press Photo」。日経写真部のカメラマン2人が一眼レフの代わりにiPhoneを手に現場を巡り、関連機材やアプリケーションを使いながら新たな写真表現を探る。日経写真部は公式ツイッター@nikkeiphotoで【iPhonegraph】としてiPhone写真を掲載。「iPhone×Press Photo」では野球編、ラグビー編などiPhoneで撮影した写真特集を連載中。
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