仕事で忙しくて運動ができず、食事も作れない

ところが、その後、目が回るほど仕事が忙しくなってしまった。 午前中のカルテがたまってしまい、昼食後にカルテを書く代わりに散歩すれば、仕事が夜までずれ込むことになる。食事の2時間後、血糖値を測る時間を知らせるアラームが鳴る時も、間違いなく診察中だ。

助産師に2週間に一度会う以外に、毎週火曜日しか外来診療をしていない母体胎児専門医の診察を受ける必要があるし、34週目からは加えて毎週、胎児の心拍数を調べるNST(ノンストレステスト)と、胎児が低酸素症となっていないかを確認するBPS(biophysical profile scoring)も受けなければいけなくなった。 だが、産婦人科のある病院は仕事場からも家からも電車で40分ほど離れた所にある上、待ち時間も長い。前はマタニティーヨガに行ったり、たまにはジムで軽く運動をしたりしていたのだが、妊娠糖尿病になってからはそんな時間がなくなり、料理する暇もなくなったため、気がついたら外食ばかりの毎日である。

これでは、本末転倒ではないか!

さて、困らされている妊娠糖尿病だが、図らずも医療者が病気になるとどうなるか、成人病に関わるNPとして貴重な経験ができた。 当然だが、野菜が多くてヘルシーな食事は、パンや白米を食べるよりも高くつくので、一部の患者さんにとっては、コストが大きなハードルになる。

また、私の場合は「赤ちゃんを産むまで」と、期間が限定されているから頑張れた(もちろん、産後も糖尿病でこの食事が続く可能性はあるが、少ない可能性である)。しかし、もしこの食事療法が一生続く場合、あるいは血糖値を下げなければいけない理由がもうすぐ産まれる赤ちゃんの健康を守るためでなく、「将来の心筋梗塞を予防するため」など、曖昧で実感の湧かない理由だった場合、頑張りにくいだろうということは容易に想像がついた。

この経験を、患者さんの治療や食事指導をより効果的にするために生かしていきたいと考えている。

緒方さやか(おがた・さやか)
婦人科・成人科ナースプラクティショナー(NP)。2006年米イェール看護大学院婦人科・成人科ナースプラクティショナー学科卒。「チーム医療維新」管理人。プライマリケアを担うナースプラクティショナーとして、現在、マンハッタンの外来クリニックで診療にあたる。米ニューヨーク在住。

[日経メディカルオンライン 2012年12月7日付記事を基に再構成]

注目記事