テーマは「おやじ」、ドラマ史を彩る脚本家が集結
~おやじの背中
日経エンタテインメント!
80年代から『うちの子にかぎって…』『魔女の条件』『さとうきび畑の唄』などのヒット作を生み出してきたTBSのプロデューサー、八木康夫氏。2014年夏、7年ぶりに連続ドラマ『おやじの背中』を手がける。
本作は毎回異なる脚本家による1話完結のオリジナルストーリー。10組の俳優が父と息子・娘を演じ、池端俊策はじめ、倉本聰、山田太一、三谷幸喜ら日本のドラマ史を彩る面々がそれぞれの親子像を書き分ける。出演は役所広司×満島ひかり、田村正和×松たか子、渡瀬恒彦×中村勘九郎など楽しみな顔ぶれがずらり。演出も鶴橋康夫、石橋冠、山室大輔など、ドラマファンにはたまらない面々が集まった。
八木氏は現在のドラマ界を案じ、より良くしたいとの思いから今回の企画を立ち上げたという。
「今はワンクール見続けるライフスタイルが崩れていると思う。プロデューサーの意思を反映させることが難しく、"これをやりたい"という現場の思いが通じなくなっている。企画が見えやすいマンガ原作などが好まれ、ドラマ作りの現場がシステム化、サラリーマン化している」(八木氏)
続けるため充実の作品群を
『おやじの背中』が放送される「日曜劇場」は58年前の1956年にスタートしたドラマ枠。1993年まで37年もの間、1話完結の作品だったが、その後ワンクールの連ドラを放送する枠になった。1話完結スタイルは21年ぶり。八木氏はこれを機に「(1話完結スタイルを)つなげたい」と言い、 今回はその試金石として「どんなラインアップを用意するかが大事」だと語る。
「最初にリストアップした脚本家のうち、半分くらいいければと思いましたが、全員の方に書いてもらえた。どなたも前向きで、裏を返せば脚本家の皆さんも今のドラマの作り方に危機感を持っていると思いましたね」(八木氏)
八木氏から脚本家へのリクエストは「タイトルからイメージする1話完結のドラマを書いてください」ということのみ。完成度の高い脚本はキャスティングにも良い影響を与えたという。
「俳優の本性として良い脚本があれば出たい。プロットの段階での出演依頼ではスケジュール的に無理と言われた方に『脚本が完成したので、読むだけでも』とお願いしたら、『この脚本なら出たい』という方が数名いました」
作品に共通するテーマは"おやじ"。八木氏が制作人生の上で大切にしてきた題材だ。
「僕はこれまでに『パパはニュースキャスター』や『オヤジぃ。』といった作品を作ってきました。今回も誰を主人公にするか考えたとき、"父親"がまず思い浮かんだ。お母さんは子どもが100%甘えられる存在だが、お父さんはある時期から親も子も言いたいことが言えない関係になる。そこにドラマがある」(八木氏)
かつて家の中心にあり、一家そろって楽しめる娯楽の象徴だったテレビ。その中でホームドラマはドラマの主流であり、数々のヒット作が生まれた。すっかり影が薄くなったそのジャンルであえて作品づくりに臨む。1時間の中にどんな味わいがあるのか、じっくり楽しみたい。
(ライター 田中あおい)
[日経エンタテインメント! 2014年8月号の記事を基に再構成]
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