たった5ミリリットルの血液で、婦人科がんを早期発見
血中のアミノ酸濃度を調べるだけで、簡単に乳がん、子宮がん、卵巣がんなどのリスクが分かる検査が登場し、実施医療機関が拡大している。女性がこの検査を受けるメリットは何だろうか。
7つのがんのリスクが分かる画期的な検査
「人体の約60%は水で、20%はアミノ酸(たんぱく質)。健康時には血中のアミノ酸濃度が一定に保たれているが、がんになると特定のアミノ酸の生成が活性化するなどバランスが変化する。アミノインデックス・がんリスクスクリーニング(AICS)は、アミノ酸濃度のバランスを統計的に解析することでがんリスクを評価する検査。受診者の体の負担は最小限で、5ミリリットルの血液を採取するだけで複数のがんのリスクが分かるのだから画期的」と三井記念病院総合健診センターの山門實特任顧問。
血液中のアミノ酸濃度を測定し、がん、糖尿病など生活習慣病のリスクを解析する検査。2012年5月からAICSが実用化され、アミノインデックス・メタボリックリスクスクリーニング(AIMS)も近々スタート。かくれ脳梗塞を発見する検査の実用化も検討されている。
【AICSの3大メリット】
1.がんの種類やタイプにかかわらず一度に複数のがんを検査できる
2.早期がんが検出できる
3.採血による簡便な検査で被ばくの心配がなく、健康診断と同時に受診できる
AICSは全国800カ所(2014年3月5日現在)の医療機関が、人間ドックなどで自費で実施している。費用は「女性AICS5種」が2万円前後、同2種が1万円弱で、健康保険組合や市町村によっては無料か低負担で受けられる。結果は約2週間後、各がんのリスクがランクA~Cの3段階で判定される。ランクCなら、がんになっている危険性があり、精密検査を薦められる。「ランクCと判定された人は、がんではなくても前がん病変ができつつある危険性がある。生活習慣を見直し、がん予防に取り組むきっかけにして」と山門特任顧問。
「女性AICS5種」で分かるのは、次の6種類のがん。子宮・卵巣がんがランクCの場合は、子宮頸がん、子宮体がん、卵巣がんのどれかになっているリスクが高い。
・女性AICS5種(胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮・卵巣がん)
・女性AICS2種(乳がん、子宮・卵巣がん)
ほかに男性AICS4種(胃がん、肺がん、大腸がん、前立腺がん)も。
「人間ドックなどで婦人科がんの診断に使われる腫瘍マーカーは早期がんを見落とすことがあるが、AICSは早期がんに感度が高い。20歳以上なら子宮頸がん、40歳以上は乳がんなどがん検診を別途受けてほしいが、検診をしにくい子宮体がんや卵巣がんは、AICSを活用し早期発見・治療すれば、がんで亡くなる人を減らせる可能性がある」と横浜市立大学附属病院化学療法センターの宮城悦子准教授は強調する。
一方、内臓脂肪型肥満や脂肪肝、食後高血糖でもアミノ酸濃度のバランスは変化する。これを応用して、三井記念病院総合健診センターでは、2014年5月以降、隠れ肥満などを見つける「アミノインデックス・メタボリックリスクスクリーニング」もスタートする予定だ。
「臨床アミノ酸研究会」のサイトで検索
http://www.aa-pri.jp/b00/b06/
この人たちに聞きました
三井記念病院総合健診センター特任顧問。1972年群馬大学医学部卒業。三井記念病院総合健診センター所長などを経て、2012年より現職。健診・人間ドックの専門家。
宮城悦子さん
横浜市立大学附属病院化学療法センター准教授。1988年横浜市立大学医学部卒業。神奈川県立がんセンター婦人科医長、などを経て08年より現職。専門は婦人科腫瘍学。
(医療ライター 福島安紀)
[日経ヘルス2014年5月号の記事を基に再構成]
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