日本酒の季節、まずは「ひやおろし」とスペイン料理で

早春に搾られた新酒が、ひと夏を越し、熟成を深めた“ひやおろし”。外気と貯蔵庫の温度が同じくらいになる頃、「冷や」のまま大桶からたるに「卸して」出荷したことに由来し、秋の酒として珍重されてきた。

日本酒といえば、和食店か居酒屋を連想する人が多いだろう。だが、最近では、女性が気軽に立ち寄れるようなおしゃれな空間で、日本酒をウリにしている店が続々とオープンしている。

(左から)徳島県の「三芳菊」、奈良県の「はなともえ」、秋田県の「ヤマユ」、青森県の「六根」。9月中旬以降、ひやおろしも続々と入荷し、充実したラインアップがそろう(この記事の写真:後藤麻由香 )

その先駆けともいえるのが、東京・目黒の「和酒バル KIRAZ」。全18席のカフェのような空間で、メニューには、生ハムやアヒージョ、トルティージャなどのスペイン料理が並ぶ。

「“バル”という気軽さで、普段あまり日本酒を飲まない方に、日本酒のおいしさを知ってもらう入り口のような存在になれたらと思っています。食材の味をシンプルに生かすという点で、日本料理とスペイン料理は似ているので、日本酒とも相性がいいんですよ」と語るのは、オーナーの馬宮加奈さん。徳島県の三芳菊酒造の長女で、蔵では、兄が酒造りをしている。

8種類以上ある「三芳菊」のほか、各地の日本酒が約50種類そろう。ワイングラスで供するのもこの店のこだわりだ。

「日本酒業界では、若手の杜氏(とうじ)への世代交代も多く、飲みやすい低アルコールや、スパークリング、ワイン酵母で醸造したフルーティーなものなど、固定観念から逸脱した新たなお酒が増えています。好みの味を見つけるお手伝いをすることで、日本酒に興味を持ってもらうきっかけになればうれしいです」

気になる銘柄を少量ずつ飲み比べできるシステムや、日本酒ベースのカクテルもあり、日本酒デビューをしたい人から日本酒通まで、幅広い客層が満足できる一軒。

日本酒の味わいが幅を広げるように、提供する飲食店も進化を遂げている。豊穣(ほうじょう)の秋、ぜひ新たな日本酒の味わい方を楽しんでみてはいかがだろうか。

「三芳菊」を使った「フレッシュカクテル ネーブルオレンジ」(写真左)。ハモンセラーノ、ミラノサラミ、ソブラサーダ(生ハムパテ)などの盛り合わせ(同中央)。隠し味に日本酒を使った「大海老アヒージョ」(同右)
和酒バル KIRAZ
DATA
東京都目黒区三田2-9-5 1階
Tel:03-3712-7277
営業:18時30分~23時(L.O.)
休業:月曜・日曜
主なメニュー:日本酒/グラス700円~、コース/3500円~

(ライター 外川ゆい)

[日経おとなのOFF2013年10月号の記事を基に再構成]