常識破りこだわりでブームを加速、『けいおん!』音楽の秘密日経エンタテインメント!

1980~90年代のバンドブームをほうふつとさせる、「放課後ティータイム」の前向きなガールズ・ロックや、超ハイテンションなオープニング&ハードかつクールなエンディング……。「究極のこだわり」で作られた『けいおん!』の音楽はブームをけん引、原作マンガやアニメには出せない部分を補い、その余波はCDや楽譜の販売から、関連する各種楽器の売り上げにまで及んだ。
「登場人物が使用している楽器は未公表ながら、平沢唯(g)=ギブソン・50’s レスポールスタンダードフェイデッド。秋山澪(b)=フェンダージャパン・ジャズベース(レフトハンド仕様)。田井中律(ds)=ヤマハ・ヒップギグメローイエロー+ジルジャン・シンバル&ハイハット。琴吹紬(kb)=コルグ・トライトンエクストリーム(76 鍵仕様)+コルグ・シルキーも。中野梓(g)=フェンダージャパン・ムスタング。と推定されます」(市川・談)(原画/坂本一也 彩色/津田幸恵 背景/竹内友紀子 撮影/山本倫)

バンドブーム全盛から一大音楽バブル期を迎えた1990年代ですら、バンドマンガはマンガ誌から敬遠され続けた。「誌面から音は聴こえないうえに、説得力のある歌詞を書くのも難しく、リアリティーがある作品はとても望めない」というのが、当時の編集者たちの一貫した見解だった。

それでも2000年代、『NANA』『BECK』とようやくバンドマンガが、アニメ&実写化されるほどの商業的成功を獲得した。前者は恋愛マンガ、後者はダメ少年の成長マンガという二層構造作品だったが、それでもマルチメディア化する際の最重要マターは、劇中で流れる「音楽」のリアリティーにほかならない。『NANA』は実在の人気アーティストたちに楽曲を任せ、『BECK』は主人公の神の歌声を無音にして全編インストにするという荒業で、各々しのいだ。制作陣の苦労がしのばれる。

さて『けいおん!』だ。最大の懸案は、劇中歌がただの女子高生部活バンドの演奏だという無茶な設定にある。しかも軽音楽部に入部して初めて、ギターを持った子までいる。そんなリアリティーと、アニメというファンタジーの狭間で、しかし『けいおん!』サウンドは見事に、オンエア中から全国の学園祭でこぞってコピーされるほど、大歓迎されたのだ。

仮想「5ピースの素人女子高生バンド・放課後ティータイム」の音楽は、どのようにして説得力を持ちえたのだろう。

右からポニーキャニオン音楽プロデューサーの磯山敦氏、F.M.F の小森茂生氏と深井康介氏。取材日は、映画『けいおん!』用レコーディングの真っ最中。「基本的な考え方は変わってませんが、ご期待に沿える楽曲がそろったかと思います。映画ならではの5.1chのサラウンドにも細心の注意をはらって挑戦しています」(小森氏)。

「彼女たちが使っている楽器のメーカーや種類は、最初から指定されていました。原作で既に描かれていますから」(音楽プロデューサーのF.M.F小森茂生氏)。

「その楽器を逸脱しない音で録っています」(音楽プロデューサーのポニーキャニオン磯山敦氏)。

つまり、音楽室や講堂の舞台上で演奏された劇中歌群は、彼女たちの楽器で出せるであろう音だけで、レコーディングしている。

「演奏自体もプロっぽくならないよう、かなりざっくりとした生演奏に近いテイクを心がけました。『あまり難しいことをやるな』と(苦笑)」(音楽コーディネーターのF.M.F深井康介氏)。

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